「取ってもメリットがない」といった不満は数あれど、多くの医師がこぞって目指す、専門医資格。オーソドックスな“2階建て”か、広〜い“平屋”か、はたまた天まで突き抜けるペンシルビルか。あなたはどう建てる?


Illustration: Satoshi Ohtera

 手間とお金がかかるのに、取ってもメリットがない。質の担保がない。領域が重複したり細分化しすぎて、数が多すぎる…。とかく批判の多い日本の専門医制度。この現状を改善するため、「2015年には、新しい制度をスタートさせたい」。79の医学学会が加盟する日本専門医制評価・認定機構理事長の池田康夫氏は、今後の見通しをこう語る。

 機構が目指すのは、患者の目線から見て分かりやすい専門医制度。そのために現段階で決まっている方針は、2階建ての制度設計だ(下図)。基本領域として位置づけた専門医が言わば1階部分。2階に相当するサブスペシャリティの専門医資格の取得には、基本領域のいずれかの専門医(あるいは認定医)であることが条件となる。

 下図の各領域に並ぶ専門医は、各学会の専門医制度や研修プログラムを機構が評価して“認定”したものだ。新制度スタート時には、専門医の認定や研修プログラム・施設の評価といった業務は学会と切り離し、中立的第三者機関において、それぞれの専門医について設けた委員会が担当するという構想だ。

 日本専門医制評価・認定機構が現在認定している基本領域は18診療科。これに「総合診療科」あるいは「家庭医療科」が加わる方向で議論が進んでおり、最終的には19の診療科で固まりそうだ。
 2階部分のサブスペシャリティの認定は現在17診療科で、これから増える予定。2階の上に3階をつくるのか、エコーや内視鏡など診療科を横断するような分野の位置づけをどうするかといった点は現在検討中。
 患者目線での分かりやすさという観点からは、「なぜ、この診療科がここに?」といった疑問もあるかもしれないが、専門医制度をいち早く整備して質の担保に独自に努めてきた学会もあるなど、歴史的な背景もあるようで…。
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池田康夫氏
Yasuo Ikeda
日本専門医制評価・認定機構理事長、早稲田大学理工学術院教授●1968年慶應義塾大学卒。91年慶應義塾大学教授、2005年慶應義塾大学医学部長。08年に社団法人日本専門医制評価・認定機構が発足し、理事長に就任。

基本領域専門医の表示は1つに
 もっとも、ここまで読んで、「今の仕組みとどう変わるの?」と疑問に思う方は多いかもしれない。これから専門医を取得するという立場から、まず押さえておくべきは、新制度のデザインに当たっての大きな目的。それは患者の目線で、医師がどんなトレーニングを受けてきて、どれほどの技量を持っているかを分かりやすく示すということだ。

 広告表示についても、「少なくとも基本領域については、『機構認定の専門医』として表示できるものは1つに限りたい」と池田氏は語る。

 疑問や不満を感じながらも、多くの医師が専門医資格を取得しているのは医師のキャリアにおける必要条件と感じてのことだろう。患者を含めて一般への情報公開という観点からも、取得の必要性はさらに大きくなるといえる。なお、診療報酬への反映など、専門医資格の具体的なメリットについては「重要な課題であり、検討を続けていく」(池田氏)。

 今後の若手医師にとって、まず大きな変化になりそうなのが、後期研修と専門医研修の関係。初期臨床研修修了の時点で、基本領域の診療科いずれかを選び、機構が認定した専門医研修プログラム(研修施設)に応募。各プログラムの受け入れ数の調整は機構が担う─。こういった仕組みを池田氏は構想している。事実上、初期研修に続き2回目のマッチングを行うということだ。どの地域にどのような研修プログラムがあるかも明示する必要があり、各プログラムの指導体制や研修内容を評価するシステムの検討も機構は進めている。

 厚生労働省は「専門医の在り方に関する検討会」で、今後の専門医制度について、今夏に中間とりまとめ、2012年度中に最終報告書を出す予定だ。機構が掲げるこれらのビジョンがどこまで反映されるか。大きな変化が見込まれる専門医制度の情報も怠りなくアップデートしたい。