うつ病に復讐するつもりが…
 うつ病に復讐するつもりだったのに、自分がうつ病になった。運命だと思いました。医局には、大学に戻すなどの措置を取っていただきました。しかし、患者さんの話をじっくりと聞き、心を込めた返事をすることが既にできなくなっている自分に気付いたのです。

 「親友を死なせた医者のようにはなりたくないと思っていたのに、なってしまった」。僕は精神科医を辞めるつもりで休みをいただきました。

「精神科医がうつ病になった」(廣済堂出版)は、泉氏の医師としての日々、うつ病治療に携わる理由となった友人の話などをまとめた体験記。

 転科だけでなく、医師を辞めることまで考えましたが、休職から半年後には常勤医に復帰。10年経った今は、抗うつ薬なしに精神科医としてうつ病治療に携われるまで回復しています。

 休職から3カ月ほど経った頃、復帰の第一歩として、週1日のペースで働き始めた精神科デイケアが転機になりました。そこで一緒に働いた看護師から「病気にならない範囲で精一杯やればいい」ということを教わったのです。

 精神科医を続けることで、うつ病が再燃する恐怖はありました。ですが、親友を救えなかった無念さは残っていましたし、「もう一度精神科医としてやってみたい」「スタイルさえ変えればなんとかなる」という思いの方がちょっと強かった。

 認知行動療法を受け始めて6年経ち、やっと「再燃しないだろう」という安心感を持てるようになりました。ただ、当時の記憶はまだ苦く残っています。医局は離れましたが、仮に「戻れ」と言われても、発症した病院や大学には怖くて戻れないですね。