若手医師に贈る「2011冬・論文コレクション」。第三弾は救命救急領域。「論文は愛をもって読む」ことを標榜する福井大総合診療部の林寛之氏に、一読推奨という論文を紹介してもらった。


林 寛之
Hiroyuki Hayashi
福井大医学部付属病院総合診療部教授●1986年自治医科大学卒。カナダトロント総合病院救急部、福井県立病院ERなどを経て現職。医局で定期開催の「ジャーナルクラブ」では後期研修医に、特定のテーマに関する論文を選んで初期研修医に渡し発表まで指導する、という試練を課す。
photo:Toshiro Hori

 症例数や統計学的な妥当性は大事だが、あまりにこだわると、読む論文はほとんどなくなってしまう。研究のオリジナリティーなどにも目を配り、「論文は愛をもって読む」ことを標榜する福井大総合診療部教授の林寛之氏。そんな林氏に、読破した大量の論文の中から、一読推奨という救急領域の論文を紹介してもらった。

 まず、「ここ数年で一番のヒット」と評するのが、一見軽症の小児の頭部打撲にCT検査を行うべきか否か、その判断基準を検討した論文9(次ページの「林先生のおすすめ論文リスト」参照)。小児への被曝のリスクを考えれば、CT検査は避けるに越したことはない。けれども、外傷性脳損傷を見逃すのは怖い…。現場でしばしば遭遇する逡巡に、指針を示そうとしたものだ。

 基準作成の検討に用いたのは、鈍的頭部外傷から24時間以内に北米の25の救急部を受診した18歳未満の患者4万2412人(平均年齢7.1歳)。その結果、2歳未満の頭部外傷についてCTをどう適用するかの考え方を示したのが図5だ。図の左側の7つの条件がクリアできれば、重篤な脳損傷であるリスクは0.02%。「こういったデータを親御さんに提示できれば、『CTはいらなさそうですね』といった説明の材料になる」。頭をぶつけてたんこぶをこしらえた子どもは頻繁に訪れる。「CTがない医療機関でこそ、参考にできる論文だと思う」(林氏)。

 図5右下を見ると、最終的にはCT適用の「判断」が求められることとなり、検討項目には「医師の裁量」「親の希望」が含まれている。「これを見て『な〜んだ。結局同じじゃないか』と思うかもしれないけれど、逆に、実際の臨床を理解する人が研究しているという、リアリティーを感じる」と林氏は評価する。

図5 軽症と見られる頭部外傷(GCS=14,15)に対するCT 検査適用の考え方(2歳未満)
(論文9) Lancet 2009;374:1160-70. より改編引用。「2 歳以上」については、ぜひ原著を参照されたい。