毎週毎週出てくるたくさんの論文。アブストラクトくらいは目を通しているけれど、「たまにはきちんと読んでみた方が…」と気にかかっている人も多いのでは。そんな若手医師に贈る「2011冬・論文コレクション」。まずは生活習慣病領域から、国立国際医療研究センター病院の能登洋氏に必読論文を挙げてもらった。


能登 洋
Hiroshi Noto
国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝症候群診療部 医長●1993年東京大学卒。東大医学部附属病院、米ベス・イスラエル医療センターで研修後、テキサス大学サウスウェスタン医療センター内分泌代謝内科、東芝病院などを経て、09年から現職。国立国際医療研究センター病院糖尿病情報センターのサイトでは、生活習慣病の注目論文について、EBM式紹介を続けている。
photo:Yuji Yuki

 診療ガイドラインの作成などにおいて、エビデンスのレベルが一番高いと位置付けられるメタ解析の文献。ならば、「まずはメタ解析がどういうものかを読んでみては?」ということで、国立国際医療研究センター病院の能登洋氏が2011年の論文の中から薦めるのが論文1(次ページの「能登先生のおすすめ論文リスト」参照)。現在のホットな話題である血糖厳格管理の効果についてのメタ解析だ。

 心血管リスクを有する2型糖尿病患者を対象にしたACCORD試験で、血糖厳格管理群の全死亡が有意に増加して試験が一部中止となったのは2008年のこと。以来、血糖の厳格管理の効果は学会でも頻繁に話題となるテーマとなり、2009年には大規模ランダム化比較試験(RCT)を対象としたメタ解析がLancetに掲載されている(Lancet 2009;373:1765-72)。2011年に報告された論文1は、大規模試験以外も対象に加えて解析したもので、日本のKumamotoスタディーなども含まれている。

 この論文から得られるポイントを能登氏は、「血糖を厳格に管理しても死亡率の改善は見られないという結果が、2009年のメタ解析と同様に得られたこと」と語る(次ページの図1)。低血糖のリスクを踏まえると(次ページの図2)、「高血糖の状態をコントロールすべきは明らかだが、下げすぎても付加価値はないと、現時点では解釈すべきだ」(能登氏)。

Illustration : Maiko Yamamoto

全体の結果のみならず、個々の試験にも着目
 論文1の一読がお薦めなのは、「メタ解析だからと、結果を鵜呑みにするのではなく、中味もきちんと見る必要があることを認識する、いい材料になる」(能登氏)という理由もある。

 解析の対象となった個々の試験の結果に着目すると、「ACCORDの結果は注目を集めたものの、強化療法によって全死亡が増加するとも減少するとも結論づけられないと気付くはず」(能登氏)。また、対象に加えた小規模な試験の中には、追跡期間が1〜2年と短い、評価項目が死亡や心血管イベントではなく合併症といったものもあり、解析対象のセレクトに少々疑問符が付くという。