医師の人生には、様々な“支出イベント”が待ち構えている。留学するか、しないか。勤務医を続けるか、開業するか。子供を医学部に入れるか、入れないか。そうした選択によって家計のキャッシュフローも大きく変動する。医師の6つのライフステージにおける支出の実態と、マネープランを考える際のポイントを紹介する。


Illustration:Atsushi Hara

 大学院留学にこれほどお金がかかると思っていなかったので、親や兄弟から借り入れた。終わってからの返済が大変だった」(30歳代男性、その他・基礎系勤務医)。

 医師のキャリアパスの一つである海外留学には、多額の費用がかかる。今回の調査回答者のうち、留学経験者は175人。留学に要した費用は、準備費用として100万〜300万円(Q1)、毎月の生活費は10万〜30万円が多く、研究留学では無給のケースも多いためか、全体では63%が生活が「赤字」だったと答えた。

 中には「2回の留学中に円高が進み、ドルに替えた資金や留学先からの給与が円換算で大きく目減りした」(50歳代男性、病理勤務医)という不運なケースも。別掲記事に紹介した北島氏(仮名)の場合は、英国の大学院留学で無給だった上に、「ポンド高で物価が非常に高く、かなり生活費を切り詰めていた」と振り返る。

 大学院の場合は、臨床現場で働きながら学ぶケースが多いため、留学ほどは苦労しないようだ。毎月の収入は「50万円以上」が40%と最多で(Q2)、「赤字」だった人は16%にとどまる。ただし、当然のことながら授業料負担があるほか、身分は不安定で、「国民年金保険料を払い忘れて、空白期間ができてしまった」との声もちらほら聞かれた。

へき地勤務で留学資金を貯めました
北島英俊氏(仮名)
40歳代の総合内科勤務医
 英国留学を志した後期研修医の頃、私は、両親のために住宅を購入したばかりでした。ローンを払いながら、留学1年間の学費・生活費600万円と、その間のローン返済や両親への仕送り額も合わせた大金を貯めるのは容易ではありません。それを可能にしたのが、北海道でのへき地勤務です。
 私は総合内科医で、へき地医療そのものに魅力を感じて赴任したのですが、いざ行ってみると、働くばかりでお金を使う暇も場所もありません(笑)。離島にいた頃は、一戸建ての宿舎や3度の食事も病院が用意してくれたので、食住費はほとんどかからず。医師が少ないので島を離れることもままなりません。一方、給料には寒冷地手当などが付くので、かなりの額に。1年後に、事務スタッフから「先生、確定申告をしてください」と言われたときには驚きました。
 へき地は遊ぶところもなく、英語の勉強にも集中できて一石二鳥です。留学を志す若い先生にはお薦めですよ。(談)
調査概要
調査概要日経メディカル オンラインの医師会員を対象に、Webアンケートを実施。期間は2011年11月10日〜11月18日。有効回答数は1005人。性別●男性885人/女性120人 年齢●20歳代98人/30歳代272人/40歳代337人/50歳代254人/60歳以上44人 勤務形態●勤務医847人/開業医113人/その他(研究施設、行政機関、企業など)45人 専門科目●内科468人/外科90人/脳神経外科29人/心臓血管外科15人/整形外科44人/形成外科8人/精神科43人/小児科50人/皮膚科21人/泌尿器科18人/産婦人科33人/眼科24人/耳鼻咽喉科21人/放射線科32人/麻酔科31人/アレルギー科2人/リウマチ科5人/リハビリテーション科4人/病理8人/その他・基礎系48人/無回答11人