取らないと気になるけど、取っても食えない―。「足の裏の米粒」と揶揄されて来た博士号。でも、気になって取ってみれば、総じて「良かった」と振り返る医師は多い。
 無給の労働力を提供して医局に奉公する期間…という風潮も、「今は昔」となりつつある。新医師臨床研修制度の施行で大学医局への入局者が減ったといわれて久しい昨今、Cadetto世代の医学博士像に迫ってみた。


Illustration: Maiko Yamamoto

 出身大学の医局に入局し、然るべき時期が来たら、大学院に進学して博士号(医学)を取得する。一昔前ならしごく当たり前だった、このコース。しかし、2004年からスタートした新医師臨床研修制度という大きな変化の中で、もはや“定番”とは言えなくなっているのが現状だろう。

 医学系大学院への進学状況はどう変化しているのだろうか。「基礎医学の研究室に入る医師は元々少なかったが、教員および大学院進学者に占める医師の割合は近年さらに減っている」。国立大学医学部長会議で「研究推進・大学院教育に関する小委員会」委員長を務める有田順氏(山梨大医学部長)は、まず基礎研究の現状をこう語る。

 国立大医学部を対象にした同小委の調査では、基礎医学系の博士課程への進学者の中に医師が占める割合は1990年が7割程度。旧文部省の施策による大学院の定員増もあり、その比率は2000年に45%、08年には25%程度と、減少の一途をたどっている。

 博士課程への進学者の減少傾向が続いているのは臨床系も同様(下図)。特に04年以降は、大学医局への入局者数が少なくなるとともに、初期研修の必修化で「医学部を卒業してすぐに大学院進学」という選択をする医師がほとんどいなくなったという理由が考えられる。

ここ数年、医師の進学者は減少基調だが、他大学出身者の受け入れは増えているという傾向も。国立大学医学部長会議「研究推進・大学院教育に関する小委員会」の調査資料より引用。データは、全国国立大医学部の集計。
6割の医師は博士号を「取得済み」か、取得に前向き。初期研修医は、94人中57人(61%)が「取得を予定」。

でも研究はしてみたい
 とはいえ、医師のほとんどが博士号に興味がないのかというと、決してそんなことはない。Cadetto.jpの調査では、「取得するつもりはない」の回答は4割程度にとどまる(Q1)。新医師臨床研修世代である04年卒以降とそれ以前の世代を比べても、割合はほぼ同じだ。

 対して、博士号取得に前向きな人に理由を聞くと、将来のポスト獲得を見据えた“野心派”よりは、「知識を深めたい」「研究に専心したい」という“学究派”が主流のようだ(次ページQ2)。

 「専門医資格の方が気になるが、研究も面白そう」。次ページQ3の結果と合わせると、こんな心情がうかがえる。