非医師家系の人の約4割が「うらやましい」と感じる医師家系。今回は、医師家系に生まれた医師たちが、実際に医師家系に生まれて得と感じたこと、損と感じたことについて、アンケートの自由解答欄から生の声を拾ってみた。


自由回答から
●父親は開業医だったが、「○○医院の院長は人殺し」と書いた紙を町中に貼られ、夜中にはがして歩いた記憶がある。時間外の電話に「お父さんはいません」と答えさせられたことも少なくない。そんな経験をしたからか、幼な心に「親は絶対ではない」「世間は適当なことを言う」といった意識が生まれ、クールな人間観が養われたような気がする。そのことが得なのか、損なのか分からないが…。(40歳代、女性、整形外科)
●親とは違う大学、診療科を選んだが、医者の世界はとても狭い。親のおかげで、年配の先生から「○○先生の娘さんですね」と声をかけてもらえるので、自分の診療科以外の先生とも交友関係を築きやすい。(20歳代、女性、内科)
●医師家系の場合、「医師になるか否か」の選択を人生の早い時期に行わなければならない。その分、医師の道を選んだ決断が正しかったのかどうかは今でも分からない。医師の仕事では、創造的な能力が必要とされない。大所高所から考えて人類に貢献するような、男冥利に尽きる仕事ではないと思う。(60歳代、男性、産婦人科)
●祖父は医療界で高名な存在で、父もそれなりの地位にいたので、偉い先生方に一度で名前を覚えてもらえた。しかし、きちんとした発表をしないと後ろ指を差されそうで、年を取るごとにプレッシャーは強まっている
 現在の医療界を見ると、訴訟リスクや規制が増え、精神的にも苦労が多い。コースに乗ったサラリーマンの方がよほど恵まれているように思う。(40歳代、男性、内科)
●親と同じ大学医学部に進学したが、診療科を決めるときはあえて違う科を選択した。それでも勤務先が実家と同じ県内なので、何かと「○○先生の息子か」などと言われ、気づまりというか、仕事がしにくい感じがする。(40歳代、男性、内科)
父の“名前”で人脈広がる、実家は「いつか継がざるを得ない場所」
梶原崇弘
Takahiro Kajiwara
日本大学消化器外科助手●2000年日大卒。同年、日大第三外科入局。日本がんセンター中央病院を経て、現職。父は日病副会長の梶原優氏で、崇弘氏は3代目。
 私は父と同じ大学を卒業し、同じ医局に入局しました。父は大学同窓会の副会長で、日本病院会の副会長を務めるなど、医局OBの中でもメジャーな存在です。そんな背景もあり、何かと「梶原先生の息子さんです」と紹介され、ポリクリの頃から上の先生方には目をかけていただきました。
 医局だけではありません。私は2002年から5年間、国立がんセンター(現:国立がん研究センター)で働いていましたが、その際も院長や事務方にすぐ覚えていただけました。VIPの患者さんの中に祖父や父と懇意の方がおられたことから、レジデントに厳しい先生にもかわいがっていただきました。がんセンターは完全実力主義ですから、あくまで人脈が広がるきっかけが増えただけではありましたが、これは医師家系のメリットといえるでしょうね。
 また、父は常に夢を語るタイプですから、少々好きにやっても「お父さんと比べれば」と大目に見てもらえたことも利点でしょうか(笑)。
 逆にデメリットは良くも悪くも家に縛られてしまうこと。現在、私は大学で大きな手術も任せていただけるようになりました。現在の大学での環境はとても恵まれており、魅力はあります。ですが、55床の病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーションなどを抱える実家は無視できません。既に実家の法人の理事という立場ですし、近い将来、実家に戻ることを考えないといけません。そうすれば、当然、大きな手術からは身を引かざるを得なくなりますね。(談)
調査概要
日経メディカル オンラインの医師会員を対象に、オンラインアンケートを実施。期間は2011年8月2日〜8日。有効回答数は1165人。医師家系(親が医師である人)330人/非医師家系835人。以下、医師家系の回答者のプロフィル●性別:男性:280人/女性:50人●年齢:20〜30歳:39人/31〜40歳:84人/41〜50歳:101人/51〜60歳:79人/61〜70歳:20人/71歳以上:7人●医師として何代目か:2代目:190人/3代目:107人/4代目:20人/5代目以上:13人(最長は16代目)●所属:大学病院:53人/国公立病院:40人/公的病院(日赤、厚生連、済生会など):30人/私立病院:83人/その他の病院:7人/診療所:101人/その他(研究施設、行政機関、企業など):16人●専門科目:内科:98人/循環器科:19人/産婦人科:16人/小児科:16人/整形外科:16人/消化器内科:14人/精神・神経科:14人/眼科:12人/外科:9人/耳鼻咽喉科9人/呼吸器科:8人/皮膚科:8人/消化器外科:6人/神経内科:3人/心臓血管外科:6人/腎臓内科:6人/脳神経外科:5人/泌尿器科:6人/放射線科:5人/リハビリテーション:5人/基礎:5人/血液内科:5人/内分泌代謝内科:3人/救急:2人/麻酔科2人/形成外科:1人/その他:26人/未回答5人

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