鷺坂彰吾 さん
Shogo Sagisaka
昭和大学医学部3年生
福岡県出身

岡野 私は以前から、へき地医療や、外国の紛争地帯の医療に従事したいと考えていました。「自分しかできないことは何か」と突き詰めたら、他人が敬遠するような離島や戦場で診療することだろうと。今回の経験で災害医療にも関心を持ちました。

 被災地である先生と話したとき、「勤務先の病院が救急や災害医療に理解があり、快く送り出してくれた」と聞いて、心を動かされました。自分も将来、勤務先を決めるとき、そんな病院を選ぼうと思っています。

鷺坂 僕はまだ3年生ですが、救急医療の道に進みたいと思っています。診療に限らず、活動の幅も広げたい。被災地の病院を見て、災害対応の難しさを痛感したので、院内の防災対策やマニュアル作りに携わってみたいですね。

─現状の課題や今後の予定は?

小澤 被災地は復旧しつつありますが、まだ一部です。がれきの山が手つかずのまま残っている地域も多い。にもかかわらず、世間で「震災後の対応は一段落した」というイメージが広がり、関心が徐々に薄れていくことに危機感があります。

 僕たちが滞在したのは短い期間ですが、被災者の方々はずっとそこで暮らしている。そのことを念頭に置いて、今後も継続的に支援を行いたいです。多くの学生に参加してもらえるよう広報活動に力を入れ、派遣される先生方へのサポートも続けていきたいと考えています。

被災地の支援に赴く医療者への研修会
「支援」者のメンタルヘルスにも注意を
PCATの派遣前研修。被災地のリアルタイムなニーズも紹介される。
 日本プライマリ・ケア連合学会の東日本大震災支援プロジェクト「PCAT(Primary Care for All Team )」では、石巻市や気仙沼市など被災地へ支援に赴く医療者を広く募っており、派遣前には被災地での医療について半日の研修を実施している。
 日経メディカル オンラインブログ「“虎”の病院経営日記」連載中の東謙二氏も、「医師歴もうすぐ20年のおっさん医師に7時間の講義?と思ったが、とても短く感じた」という、この講習。どんな内容なのか、見学させてもらった。
 医師に限らず、医療関係職を広く募集しているだけあって、その日の講習に集まった9人の参加者もバラエティ豊か。医師のほか、歯科医師、看護師、薬剤師、鍼灸師と職種は様々だ。その構成を反映するように、最初の講義では、医師の視点だけでは見逃してしまうような被災者のニーズの実例を紹介し、多職種による介入の有効性が示された。
 印象的だったのが、「支援」者のメンタルヘルスへの注意喚起。被災者を支える地元の医療者や自治体職員といった人々の消耗をケアしなければならないのはもちろんだが、見落とされがちなのが、外部からの支援者のストレス。
 使命感に駆られて、朝早くから働き、夜遅くまでディスカッションという過重労働。加えて、余震や津波への恐怖、被災者の過酷な体験の聴取といったストレスにさらされ、被災地から戻った後もがれきの光景のフラッシュバックに悩むことは珍しくない。
 PCATでは「戻ってから2日間はゆっくり休むこと」を推奨しているものの、そうはいかないのが医療者の常だろう。そこで効果的なのが、「“自然な”デブリーフィング」。テキストにまとめる、取材を受ける、ミーティングで報告といったことで被災地での活動や体験を振り返ると、「自分の中で整理が付いて気分が軽くなった」という支援者は多いそうだ。