医師を対象にした今回の東日本大震災のアンケートでは、自身の専門やキャリアへの影響についても尋ねた。「震災を機に、診療の幅を広げたいと思った」といった声から、「医局にいるのがバカバカしくなった」「予備自衛官になりたい」といった意見まで、様々な回答が寄せられた。


 アンケートによると、「大震災が専門やキャリアを考え直すきっかけになったか?」との問いに対し、「いいえ」との回答が81.9%。全体としては、今回の震災の影響を受けていないという結果になった。ただ、それでも2割近くの人は、「今後のキャリアプランに変化が生まれた」と答えている。

 「はい」と回答した人のコメントを見ると、「災害時に対応できるように幅広い知識と技術を身に付けたい」と、自分の専門以外の領域に目を向ける内容が多い。DMATなどへの参加、救急の専門研修の受講を検討している人も少なくない。

 一方、「いいえ」と回答した人のコメントでも、「医師の使命を強く感じた」といった記述が目立つ。専門やキャリアの問題にかかわらず、「被災者の役に立ちたい」との思いは共通しているといえる。

 DMATの一員として、救命、患者搬送などに従事した。個人的には、阪神・淡路大震災の経験がきっかけで医師を志し、今回は念願がかなって救急医として被災地に派遣された。
 医師として役に立てたと感じたが、その半面、あまりの被害の大きさに無力感もあった。震災直後に派遣された我々には被災状況の情報が全くなく、現場で救命医療を必要とする患者が少なかったからだ。支援活動が終わり、様々なメディアを通して被災地の惨状を見聞きすると、「もっと何かできたのでは」と考えることが多い。
 将来は、災害医療に何らかの形でかかわれるキャリアに進むのもありなのかなと感じている。厚生労働省の医系技官、都道府県の医師技官として働く道や、国際協力機構(JICA)の活動に従事する道もあると思う。
(30歳代・男性、救急科、大阪府)
 医師がボランティアで命を危険にさらすことは、絶対に理解できない。活動中に死んだり大けがをして、家族を悲しませる可能性があるから。もっとも、生命・健康の安全管理、けがをしたときの補償、給与の保証が確実になされるのであれば、検討の余地はある。
(30歳代・男性、内科、福岡県)
 大震災が起きようが起きまいが、自分の職業観は全く変わらない。医師を目指したときから、人々に仕えて尽くすのが当然だと思っていたから。今後、もし大災害が起きた場合、民医連のような組織があれば、ぜひ活動に参加して、医療人としての使命を果たしたい。
(50歳代・男性、内科、北海道)
 勤務先の福島県の病院で震災に遭遇。余震が続き、先が見えない中で医療に従事することに不安を覚え、同時に臨機応変に対応できるようにならなければと考えた。一方、今後もし自分が被災者となったら、やはり医療行為を求められるのかと思うと複雑である。
(30歳代・女性、麻酔科、東京都)
 診療支援に携わった病院で、勤務医が疲弊している姿を見て、事務方は医師の勤務時間を管理し、診療を無理強いしてはならないと思った。一方、借金を抱えたまま被災した開業医を見て、災害のリスクまで考えると、今のまま勤務医を続けた方がよいと感じた。
(30歳代・男性、内科、愛知県)
 医局の命令に従っていても、医師として働く喜びがない…と感じていた矢先、目にした被災地の映像はショッキングだった。医局のしがらみがバカバカしくなり、医師として残された人生を有意義に過ごしたいと思った。できれば医療行政に携わり、多くの人々に貢献したい
(30歳代・男性、脳神経外科、岐阜県)
 災害時に何かしたいとの思いは強い。ただし、被災地で医療を行うためには、コメディカル、医療機器、薬剤などの確保が不可欠。その上で、ニーズの把握、他科チームとの連携などが必要になるので、個人では限界がある。今は予備自衛官になることを真剣に考えている
(30歳代・男性、外科、千葉県)