臨床留学の参考になる、『アメリカ臨床留学への道』(左、南山堂)、『外科診療にみる医学留学へのパスポート』(右、はる書房)

外科系なら欧州やアジアも
 こうした一般的なルート以外にも、門戸は限られるが、臨床留学への道はある。米国の場合、東京海上日動メディカルサービスが主宰する「アメリカ臨床医学留学プログラム(N Program)」や野口医学研究所の医学交流プログラムなどが代表例。前者は、合格するとマッチングを経ずに提携病院のレジデントとして採用される。後者は、最長6カ月のエクスターン研修の機会を与えるもので、レジデンシー・プログラムの合格は保証されていないが、現地で高い評価を受ければ、合格への近道となる。

 またカナダの場合、日本の専門医資格があれば臨床フェローとして働ける。ただし、競争は激しく、「実際にはUSMLEステップ2合格などの実績がないとポスト獲得は難しい」との声も。

 一方、外科の場合、「見学ではなく研修で行くのであれば、そこでオペをしなければ意味がない」と米田氏は言い切る。特に、国内ではなかなか症例を積めない心臓外科では、海外に活路を求める若手医師は少なくない。最近は、ステント技術の発達などの影響で心臓外科の人気が下がってきているため、米国では執刀できるレジデントのポストの空きが若干増えているという。

 欧州やアジアで武者修行をする外科医もいる。「近年、アジアの大学病院のレベルは非常に上がっていて、症例数も日本と比べると桁違いに多いので、有力な選択肢になり得る」と米田氏は言う。

 気になるのは帰国後の就職先だが、「しっかり腕を磨いてくれば、必ず道は開かれます」と米田氏。ただ、ポストが空くまでの“待ち時間”は覚悟しておいた方がよさそうだ。

論文や見学では分からない“違い”を実感してほしい
宮坂勝之氏
Katsuyuki Miyasaka
日米医学医療交流財団理事長●1969年信州大医学部卒。73年カナダトロント小児病院集中治療部レジデント。トロント大麻酔科臨床講師、国立成育医療センター手術・集中治療部部長、長野県立こども病院院長などを経て、2011年より聖路加看護大大学院特任教授。同財団の設立者の1人。
 この10年で、米国に留学する日本人学生の数は4割近く減少しているそうです。「日本の方が便利で居心地がいいから」など様々な理由がいわれていますが、この「内向き志向」は、医師にも多少共通するように思います。
 米国、カナダに臨床留学した日本人医師の実数は把握できていませんが、傾向としては、新医師臨床研修制度が始まった頃から減少し、ここ数年は少し増えているものの、大きな増加はないといったところでしょうか。正式なレジデントプログラムに参加する医師は年間15人前後、臨床フェローを含めても50人には達しないでしょう。
 現状では、大学を離れて臨床の腕を磨いて帰ってきても、一部の“アメリカ的”な押しの強い医師を除いては、なかなか声をかけてもらえない。こうした帰国後の就職難の問題も、医師が尻込みをする要因であり、改善していかなければならないと考えています。
 日本版フルブライト奨学金を目指して設立した当財団は、発足以来20年間、600人を超える医師に留学助成をしてきました。寄付金のみで運営しているため財政面の制約はありますが、意欲ある若手医師の力になりたいと思っています。ぜひ現地で働いてみて、論文や見学では気づかない米国の医療システムの素晴らしさ、日本との違いを肌で感じてほしいですね。(談)