医師の研究留学が減りつつあると話す医師は多い。以前と比較して、研究よりも臨床を重視する流れがあるほか、大学医局が人手不足から海外留学を許可する余裕がなくなっていたり、国立大学が独立法人化したことなどが影響を与えているようだ。以前は多くの国立大学で、留学中も大学から給与が一部支給されていたほか、帰国後のポストも保証されていた。だが、独法化後、そのような保証ができない医局が増えている。

 とはいえ、実際に留学した医師たちは、口をそろえて「留学をしてよかった」と話す。臨床留学のような試験を経なくても、海外の文化や医療を肌で感じられるのが最も大きな利点だ。

 米国アルバート・アインシュタイン医大に研究留学した長崎労災病院第2外科部長の川下雄丈氏は「日本の医療の良いところと問題点を冷静に見ることができた。現在、臨床を行う際に『自分のやっていることが世界標準から外れたものではないか』と客観的に自分を見つめられるようになったのは留学のおかげ」と話す。

 研究自体のレベルも高い。補助金さえつけば、日本とは比較にならない潤沢な研究費が用意されるほか、大学生などのアシスタントが多く、雑務に携わることも少ないため、研究に集中できる。

 そのほか、大学で上のポストを目指すならば、“箔付け”の意味でも留学をしていた方が有利なのは間違いない。臨床が重視されるようになったとはいえ、留学の経験がない教授はまだまだ少ないからだ。

 また、忙しい臨床医にとって、留学中は“週5日、9時から5時”の生活を送れる数少ないチャンスでもある。「必ず行く必要はないが、少しでも興味があれば迷いなく行くべき」(米国ハーバード大に研究留学した旭川医大眼組織再生医学講座講師の高宮央氏)ものといえるだろう。

留学で大変な点として、経済面での負担を挙げる人は多い。これらの助成金を受けられれば、その点は幾分でもクリアされるはずだ。
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