松原好之氏
Yoshiyuki Matsubara
1978年大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)英語学科卒業。82年より河合塾英語科講師、96年より医系予備校「進学塾ビッグバン」主宰。2010年より神奈川歯科大学客員教授。近著に「年収600万、子どもの偏差値40 以上なら、医学部に入れなさい」(講談社)。

 「医者の家庭」の教育事情は、開業医か勤務医か、言い換えれば継承すべき資産があるか、ないかで、全く異なります。「うちの祖先は○○藩の御典医だった」という家はもとより、一代で開業した場合も、相続上の問題を考えれば子供を医者にしたいという願いは切実です。医院は切り売りできませんから。

 特に長男には、何年かかっても、どの大学でもいいから、どんなにお金をかけてもいいから医者になってほしい、という家庭が多いと感じています。以前、兄弟そろって医学部受験した開業医の家庭では、兄は合格しやすい地域枠、弟は一般で受験させていましたね。長男のプレッシャーは非常に大きなものです。

 一般家庭では、医学部進学は数多い選択肢の一つですが、医師家庭の多くは「医学部か、それ以外か」の二者択一です。これは勤務医の家庭も同じ。たとえ親が何も言わなくても、親の同僚から「お父さんはすごいんだよ」と聞かされたり、道で会った人から「お父さんに病気を治していただいた」と感謝されたりすれば、子供は自然と医師という職業を意識するものです。

 もちろん親が医師でも、子供が別の職業を選ぶこともあります。しかし、それは何らかの理由があって「医者にはならない」と決断したわけです。よく「医者の子が医者になれないとつらい」と聞きますが、医師家庭ならではの苦悩ですね。