中心静脈穿刺をより安全に行うため、エコーで静脈を描出しながら穿刺するという手法が普及してきた。初心者にとっては不安が少ない手法と期待されるが、やはり誤穿刺につながるピットフォールは数々ある。トラブルを回避するためには、手技の内容を論理的に考える習慣が欠かせない。


徳嶺譲芳 Joho Tokumine
JFE健康保険組合川鉄千葉病院麻酔科部長●1988年琉球大学卒。1980年代から紹介されている超音波ガイド下中心静脈穿刺法について研究を進め、鎖骨下静脈に連なる腋窩静脈への穿刺法を考案。手技の詳細を「超音波ガイド下中心静脈穿刺法マニュアル」(総合医学社)として著している。

 超音波ガイド下中心静脈穿刺の効果的かつ安全な方法の研究から得たノウハウを1冊の本にまとめた川鉄千葉病院麻酔科部長の徳嶺譲芳氏。各地からこの技術の講習会に引っ張りだこだが、「本を読んだ人からも、講習を聞いて『目からうろこが落ちた』と言われることが多く、錯覚や先入観を克服してもらうのはやっぱり大変なことだと再認識している」と語る。

 超音波ガイド下中心静脈穿刺では、静脈を縦切りにした長軸像を見ながら穿刺する手法と、輪切りにした短軸像を見ながら行う手法の2つのアプローチが考えられる。徳嶺氏が勧めるのは後者の短軸像によるアプローチ。「動脈や静脈の位置関係が分かりやすいので、動脈への誤穿刺を回避しやすい」(徳嶺氏)からだ。

血管が像に直交とは限らない
 この手法では、穿刺以前に血管走行を正確に把握することが重要なポイントだ。

 内頸静脈鎖骨下静脈の穿刺を試みようとしてエコーで走査。静脈の丸い像が得られたので、直ちにそこに穿刺する─。この行動が、超音波ガイド下中心静脈穿刺を行う上で誤穿刺の大きな原因となる。

 この背景にあるのは、得られた断面像に直交して静脈がまっすぐに走っているはず…という先入観。「円形の像が得られても、静脈を斜めに切っている像であることは頻繁にある。その像に向かって針を刺せば針先は血管からずれた方向に進んでしまう」。徳嶺氏が講習会で常に時間を割くのは、この先入観が引き起こす誤穿刺の解説だという。

 こういった事態を回避するために不可欠の手順が、エコーのsweep走査とswing走査によって、穿刺しようとする部位の血管走行を確認することだ(下図参照)。

(左)血管走行の錯覚による誤穿刺を避けるため、穿刺部位を決める前に血管走行を把握しておく必要がある。鎖骨下静脈など深くて細い静脈を穿刺する場合にはより重要となる。まず、sweep scanでは血管走行に沿ってプローブを動かし、エコー像の中央に血管があることを確認する。
(右)穿刺部位を決めたらプローブを前後に振るswing scanを行う。血管走行を正しくとらえていれば、形は変わっても常にエコー像の中央に血管が描出される。
プローブを斜めに持ちながらsweep scan をしていると、swingscanの際に血管はエコー像の中央から左右のいずれかにずれる。