また、右手(右利きの場合)の親指と人差し指を交差させるクロスフィンガーでいったん口を開けた後、もう一度スニッフィング位にする動作を初心者はよく忘れがちという。「左手で喉頭鏡を挿入、右手はクロスフィンガーをしながらスニッフィング位をキープ」という動きを、素振りによって体に覚えさせる必要がある。

 挿管時の構えのポイントは、脇を締めて左足を半歩前に出すこと。讃岐氏が従来から強調してきた注意点だが、これは日本古来の「ナンバ」(同側の手足を同時に出して歩く動きなどとして知られる)に通じることに、最近思い当たったという。

 「挿管の際には肘を上げるという誤った記載をいまだに見かけるが、力を無駄なく伝えるナンバの視点から挿管という行為を見ると、姿勢と動作は自ずと定まる」と讃岐氏。

 喉頭鏡を面で押すことと、そのための身体の動かし方を解説すると、学部生でも人形を使った1時間ほどの練習でコツをつかめるという。「異動が頻繁になってスタッフが少ない病院に赴く機会が増える30歳代の先生たちにこそ、挿管の技術を再確認してもらいたい」と讃岐氏は語る。

(1)スニッフィングの頭位で開口し、喉頭鏡を挿入。喉頭鏡は左手の指の腹に乗せて釣り合いが取れる部分で握る。
(2)手首を動かさないように小指から人差し指の順に握り込むと、喉頭鏡は自然に傾き、先端が喉頭蓋谷に到達する。
(3)気道が奥に見えたら体ごと前に。喉頭鏡の先端を面で押し出す。左手の脇を締めるのは肘の外旋、喉頭鏡の握り込みは前腕の回内、そして左手と左足を同時に前に出す動き。これらはいずれもナンバに通じる所作という。
Photo:Masahiro Hashimoto