努力に勝る王道なし─。と分かってはいても、求められる技術のレベルは年々上がっていくのに、かつてのように臨床現場で恐る恐る経験を積むことは難しくなってきた。
 努力にも工夫が必要なこの時代。長年の経験と研究から匠の技の極意を説き明かしてくれる水先案内人たちに、診療技術を習得するための勘所と心得を教えてもらった。
 1回目は「気管挿管」の“極意”を、讃岐氏に聞いた。


讃岐美智義 Michiyoshi Sanuki
広島大学病院麻酔科講師●1987年広島大学卒。麻酔科医の初期教育に力を入れる一方で、医師一般の必須手技である気管挿管についても習得のための解説に努める。2007年にはDVD「頭で理解し体で覚える気管挿管トレーニング」(日経BP社)を監修。9月末には「医師のためのモバイル仕事術 iPad・iPhoneを使い倒す!」(学研メディカル秀潤社)を発行。
Photo:Masahiro Hashimoto

 適切な頭位を確保するとともに開口。喉頭鏡を挿入して少し傾け、気道が見えたら、喉頭鏡を前に押して喉頭展開。気管挿管を行うまでの喉頭展開の流れを大まかに示せば、このようになる。しかし、これが初心者にはなかなか難しい。

 「喉頭鏡は面で押す」。喉頭展開を成功させるために一番大切なイメージを、広島大学病院麻酔科講師の讃岐美智義氏はこう伝授する。

ブレードを立てて使うために
 「面で押す」ための重要なポイントが、頭位の取り方。「頭を下げる頭部後屈法ではやり過ぎで、基本は顎を上げるスニッフィング。志村けんの『アイ〜ン』と覚えればいい」(讃岐氏)

 下に示したのは、それぞれの頭位と喉頭鏡を挿入した場合の位置関係。喉頭鏡の先端で下顎を前方に押し出すことを考えると、スニッフィングでは喉頭鏡と喉頭が面で接することができるが、頭部後屈だと喉頭鏡のブレードが寝てしまって接するのは先端の点になり、力を効率的に伝えることができなくなってしまうことが分かる。

 「患者の前歯を折らないため、喉頭鏡は後ろに倒すな」とは従来からの注意点。実はその意味するところは、歯を折る以前に「ブレードが寝てしまっては、喉頭鏡の機能を全く使えていないということ」(讃岐氏)だったといえる。

喉頭鏡を喉頭蓋谷まで挿入した場合の位置。頭部後屈ではブレードが寝てしまって下顎に接するのは先端の点になるが、スニッフィングでは面で接することができる。また、頭部後屈ではブレードが深く入って、遠い位置での操作になるため、ブレが生じやすくなる。