東日本大震災の直後に、被災地の患者さんの受け入れ状況をまとめたサイトを見る機会がありました。とある医療者団体が提供しているサイトでした。

 そのページの情報は都道府県別に並んでいるわけでもなく、ただ、受け入れ状況と連絡先、担当医師の名前が各病院個別にズラッと並んでいるだけのサイトでした。おそらく、情報提供された順に、ひたすら更新していったのだろうな、ということがありありと分かるサイトでした。

 確かに、必要な情報は掲載されているのですが、被災地の方々が見ても、必要な情報がページのどこにあるのかが分からず、欲しい情報にたどり着く前にあきらめてしまうのではないかという印象を受けました。

 また先日、ある専門医療のプロジェクトが情報発信用に開設したサイトを目にする機会がありました。そのサイトは、構造は分かりやすく、お目当ての情報にすぐにたどり着けそうでした。しかし、そこでも「一般の方はこれを見てどう思うだろう?」と考え込んでしまったのです。

 というのも、正確かつ必要十分な情報はあるのですが、専門用語などが多く、一般の方が読むにはあまりに難しすぎるように思えたのです。

 現代の日本人は、過剰なほど親切な情報提供に慣れきっています。
例えば、お笑い番組を見れば、テロップで「ここが笑うところですよ」というところまで分かり、音を消していてもかなり内容が想像できてしまうほどです。これが良いことか悪いことかはさておき、現状はそうだと思います。

 一方、医療者が提供する情報はどうでしょうか?患者さんに正確な情報を伝えたい、という思いはあっても、「実際どう見られているのか」という視点が欠けていることが多いような気がしてなりません。

 現代の日本人には「分かりやすく」「飽きさせず」「知りたい情報がすぐにみつかる」ような形の情報発信が必要なのだと思います。「知りたければいくらでも調べるだろう」というのは医療者のエゴであり、「ここに全部書いてあるんだから読んでくれ」というのは、一般の方にとっては少し酷なような気がするのです。

 例えば、最初に挙げた患者さんの受け入れ状況をまとめたサイトなら、都道府県別に分け、インデックスを付けたり、表形式にしたり、ひと目で欲しい情報がみつかるような工夫ができるのではないかと思います。地震直後であれば仕方のないことですが、今の時代、SNSでボランティアを募れば、すぐに人が集まります。事情が許せばお金をかけて見やすく整理することもできるのではないでしょうか。

 二つ目に挙げたサイトであれば、イラストなども交えながら、一般の方でも分かるような言葉にすれば、より親しみやすく、分かりやすくなります。どのぐらい平易にしなければいけないのか、というのは難しいところですが、ここは書き手自身が試行錯誤していくしかない部分が大きいと思います。

 さらに欲を言えば、必要な部分のみを印刷して手元に置いておいたり、全てのページを印刷して1冊の本のようにして扱ったりと、受け取り手によって様々な形態で使えるようになっていれば、素晴らしいと思います。

 ないものねだりと思われるかもしれませんが、残念な状態で公開されている医療情報サイトを改善するに当たって、一つ提案したいことがあります。それは「医系学生の手を借りること」です。

 今の医系学生には、HPの作成経験者もたくさんいますし、一般の方の視点を持ちつつ、医学的知識も持っています。ネットにも小さいころから慣れていますから、「このサイトの構造が分かりづらい」ということもできます。低学年であれば、より一般の目に近く、「ここの表現が分からない」という指摘も参考になるでしょう。

 そして、その医系学生自身にとっても、生きた医療情報を一般の方々に伝えるという経験は得難いものだと思います。「将来自分が患者さんに説明するときのポイント」を実践のなかで意識できるようになります。

 これがベスト、という情報提供サイトには、私自身もまだたどり着けていません。
そして、個人個人や、そのときの状況によっても、「ベストな情報提供サイト」というのは異なると思います。しかし、より多くの方にとって使いやすいサイトを目指すなら、一般の方の声はもちろん、医系学生の声を取り入れることにも意義はあると思います。

 医療者や医系学生自身にも新たな発見があり、何より患者リテラシーの向上につながります。医療現場ではお役に立てなくても、社会貢献したいと思う医系学生はいっぱいいます。医療者と一般の方の中間にいるのが医系学生です。このような医系学生の存在は、もうちょっと認知されてもいいのかな、という風に感じています。(水)