医療者向けWebサイト「m3.com」が実施した医師の意識調査で、医師を増やすべきという意見と増やす必要はないという意見が拮抗する結果が出ていました。『医師を増やすべき?賛否は拮抗、「増やすなら定員増で」』という記事です。

 日経メディカル オンラインの「医師増員、現役医師の意見は賛否二分」という記事は別の調査の報告ですが、同じような結果が出たそうです。

 m3.comの記事には「この医師不足論争、絶対数の不足か、地域あるいは診療科の偏在かの議論がここ数年来、続いています」とありますが、全国医師ユニオンが主張するように「医師が過重労働をしている」ことは、ほぼ間違いないと思います。私の周囲も「働きすぎ」と思う先生ばかりで、「医師には労働法は関係ないんだよ」と冗談交じりで語る先生も多数。こんな状況ではミスも増えるし、結果として患者さんのためになりません。

 他方、日本医師会が主張する「医師の偏在」もまた事実なのではないでしょうか。(それだけが医師不足の原因とは思いませんが)。大学では春になるたびに「○○科は入局者が多かったけど、××科はゼロだった」というような話が聞こえてきます。そして、人気の科はかなり固定化しています。

 「○○科は雰囲気が良いから人気」というような個別事情ももちろんありますが、他大学の医学生と志望科の話をしていても、同じような科が人気だったり。「人気」と「需要」が連動していればいいのですが、そうじゃないから偏在が起きるわけです。

 誰がやってもよいのですが、アンケート調査やシミュレーションを地道に重ねて、医師の需給に関するデータを蓄積していくべきではないでしょうか。将来の医療需要や医師養成数のトレンドも織り込んで。

 すごく大変そうなシミュレーションではありますが、予測も含めた診療科ごとの需給データがあれば、医学生が診療科を選ぶときの指針になると思います。「今後廃れていく」とか「人手不足で無茶苦茶忙しい」と言われている科をわざわざ選ぶ人は、かなりの情熱家や、その科によっぽど魅せられた人ぐらいでしょう。ネガティブなイメージを払拭できずに、人手不足に陥った科があることは否定出来ないと思います。

 イメージやうわさに頼るのではなく、どの程度忙しいのか、今後どうなりそうなのかを知った上で判断できればと思います。「こんなにひどいけど、それだけの覚悟はあるんだよね?」という“踏み絵”のような意味になるかも知れませんし、あるいは「今は忙しいけど、徐々に楽になっていくようだ」という見通しがあれば、敬遠されがちな科にとって救いになることもあるかもしれません。

 医学生だって人間だし、情熱だけじゃ食べていけません。自分の好きな科に進むにしても、根拠となるデータがあれば、ある程度打算もできるようになるのではないでしょうか(水)。