2017年6月15日、国立国際医療研究センターで「第1回ごはんを食べながら学ぶ外国人診療(ケニア編)」(通称:多文化ごはんプロジェクト)を開催しました。

講師の国立国際医療研究センター感染症科レジデントの塩尻大輔氏。

 食事は、その国の文化を象徴します。そこで、ケニアの医療や文化の話を聞きながら、実際にケニア料理を味わってみるという勉強会を企画しました。外国人診療や海外の文化に関心を持つ医師、薬剤師、看護師、医療通訳、医学生などが集まりました。

 講師はケニアと日本の医師免許を持つ、国立国際医療研究センター感染症科レジデントの塩尻大輔氏です。妹の喜子さんお手製のケニア料理がふるまわれました。

ケニア料理とは?

Dengu(デング) 緑豆とひき肉のシチュー。
Mandazi(マンダジィ)  揚げパン。ケニアでは代表的なお菓子。
Matoke(マトケ) グリーンバナナをつぶしたもの。
Samosa(サモサ) ひき肉を炒めて詰めたもの。軽食またはおやつとして食べる。
Chapati(チャパティ) 小麦粉を練って焼いたもの。
Kachumbari(カチュンバリ) どんなケニア食にも合うサラダ。
Sukuma(スクマ) ケール。日本では青汁に使われる野菜。
Ugali(ウガリ) ケニアの主食。トウモロコシの粉を練ったもの。
Chai(チャイ) スパイスの入ったミルクティー。

 ケニア人はこのチャイが大好きで、1日に何杯も飲むそうです。甘党のケニア人は砂糖をたくさん入れるので生活習慣病の原因になっているとも言われています。

 ほとんどの参加者が、ケニア料理を食べるのは初めてでした。見たことがない料理に最初は戸惑いもありましたが、食べてみると「美味しい!」とおかわりが止まりませんでした。

海外の医学部で学んで良かったこと、大変だったこと
 塩尻氏は、9歳で家族とともにケニアに移住しました。両親はケニアの貧しい人たちの支援活動を行なっており、現地で学校や診療所を建て地域の人たちに貢献していたため、塩尻氏は 現地の学校に通って教育を受け、2009年にナイロビ大学医学部を卒業。ケニアのキツイ県立病院での研修をへて帰国し、日本の医師国家資格を取得しました。

 「良かったことは、アフリカ人の患者さんが来院して、スワヒリ語を話すと喜んでもらえること」という塩尻氏。英語とスワヒリ語が堪能な塩尻氏は、外国人患者からの信頼も厚いのです。

 一方、日本の医師国家試験を受験する際には、読解問題に苦労したそうです。ケニアの医学部の授業はすべて英語。そのため、多くの卒業生が欧米に渡ってしまい、慢性的に医師が不足しています。塩尻氏が研修を受けたキツイ県立病院(大変な病院ではなく、キツイ県の病院です)には、医学部で習ったCTやMRIなどの機器がなく、検査といえば簡単な採血とX線くらいしかできませんでした。それどころか、衛生的な水やトイレも整備されていません。ケニアは結核蔓延国ですが、N95マスクは日本に来てから初めて見たと言います。

 そのような環境下で、ほとんど研修医だけで350床の医療を担っていた塩尻氏。背景には、卒業後は「1人でなんでもできるように」ということを前提としたケニア医学部の教育があります。実習では、外来を担当するだけでなく、手術も執刀しました。

 そんな塩尻氏が日本の病院で働き始めた頃は、日本の医療とケニアの医療の違いに戸惑うこともあったそうです。例えば、「日本の医療の質はとても高く、勉強になる事ばかりである一方、物的・経済的資源がケニアに比べて豊富で、重症患者でなくても検査から治療までフルコースで提供されるようなときにはしばしば疑問を抱いた」と言います。