今年5月、米国のネバダ州ラスベガスでSociety of Hospital MedicineSHM)が開催されました。SHMは、米国の入院患者の診療を行う医師(Hospitalist)のための学会であり、歴史は比較的新しいのですが、近年規模が拡大しつつあります。私はここに、初期研修医の根ケ山諒とともに参加しました。

 学会が開催されたラスベガスは娯楽の街ですが、世界でも最大規模の統合型リゾートIRだけに、超巨大な会議場が数多く存在します。今回の会場もラスベガスの中心地に近い場所にあり、エントランスロビーからすでににぎやかな雰囲気があふれていました。

 ラスベガスのどこのホテルでもそうなのですが、エントランスから客室や会議場に行くまでにカジノを通るようになっています。学会会場には、朝からスロットマシンやルーレットで盛り上がっているテーブルを横目に向かいます(写真)。

 会場では様々なテーマの教育講演が開催されており、昼の時間帯にポスター発表となります。私たちはポスターで症例報告をしてきたのですが、その前にこの学会に参加するようになった経緯を述べたいと思います。

研修医がアカデミック活動に触れる機会として理想的
 当院では初期研修医にアカデミックな活動に触れてもらう機会を数多く提供しています。その理由として、私自身、研修医の頃にそのような機会を持ちたくても持てなかったこと、研修医や医学生と話していて想像以上にアカデミックな活動へのニーズがあることを感じたからです。具体的には、医学英語に触れること、国際学会で発表すること、そして発表した症例を若干手直しして論文化するまでを目標としています。医学の最新の情報はまだまだ英語によるものが中心であり、どの分野に進むにしても医学英語は必要不可欠です。

 私はサブスペシャリティー分野の国際学会に何度か参加したことがありますが、専門的過ぎたり、症例発表がなかったりと、研修医にはややハードルが高い印象です。SHMは、ポスターの症例発表があるので研修医も取り組みやすく、質についても、総合診療医の徳田安春先生が「優れた発表が多い」と太鼓判を押されていました。ですから、最初に取り組むアカデミック活動として、SHMは理想的と言えるでしょう。

 SHMの学会プログラムでは、4日間の日程で主に内科や小児科分野のレクチャー、ワークショップが多数開催されており自分の興味のある分野の講演を聞くことができます。日本からも数十人の先生方の参加があり、日本人会のような懇親会も催されました。また、国内外の著名な先生方の参加もあり、日本の医学教育にも携わられているSanjay Saint先生などにお会いできるのも魅力です(写真)。

演題の採択を目指すには
 ポスター発表は、口演と並行して行われます。ポスター会場には1000枚近いポスターが並べられており、症例発表(Vignettes)と臨床研究(Research、Innovations)に分かれます。登録演題数は年々増えてきているようで、今年は1712題の応募があったそうです。ここ数年の採択率は50%程度で、狭き門となってきています(最近の採択状況はこちらから)。

 事前の査読で合否が決められるので、準備段階で症例選択と抄録作成は慎重に進めます。文章の表現も採択基準となりますので、投稿前に英文校正もしてもらいます。当院からは2題が採択され、研修医と私が1題ずつ発表しました。研修医は、国際学会はもちろんのこと、国内学会の発表経験も乏しいため、抄録作成の段階から指導医が一緒に取り組みます。1度やったら次から全て1人でできる、とはいきませんが、経験を積むことで自ら積極的に準備できるようになっていきます。

 実際の発表は、欧米学会のポスター発表によくあるスタイルで、指定された時間の間、ポスターの前に立っていて、訪れた人とディスカッションをする形式です(写真)。研修医の根ケ山が発表した演題は「An unusual dermatological disease in a patient with diabetic ketoacidosis」、私は「Characteristic palmoplantar exanthema: not yet a disease of the past」。珍しい疾患というより、他科との連携を必要とした症例を選びました。発表では向こうから質問をしてくれる場合もあれば、こちらからポスターを眺めている人に話しかけて概要を説明する場合もあります。1〜2分立ち止まってポスターを眺めている人は大抵関心を持ってくれているので、こちらが説明しようとすると興味を持って聞いてくれることが多いようです。ただし、全てをゆっくり丁寧に説明すると、冗長になってしまいます。病歴や異常所見、考察などを2〜3分程度で説明するのが良いようです。