全体的な感想を一言で表すと、参加者もスタッフも非常に楽しめたイベントでした。一般の人は、医療器具に実際に触る機会はまずありません。それに触れられるというだけでも興味を持っていただけたようでした。内容もなるべく平易で分かりやすく、を心掛けました。専門用語は極力排除し、理論や解説は最低限にとどめ、実際に体を動かして体験する中で理解ができるように工夫をしました。

 その成果もあってか、小学校低学年でも全てのブースの体験を修了することができました。お子さん連れで参加するスタッフも多くいました。中には未就学児もいましたが、5歳でもほとんどのブースは問題なく体験できただけでなく、楽しかったという感想までもらえました。小学生が上手に縫合キットを使い、縫合体験をやり遂げたときには、驚きとともに逆に専門性ってなんだろうという不安すら浮かんできたぐらいです(笑)

 スタッフのみなさんも非常に楽しめたようです。もちろん、仕事では非医療者の患者さんに接しているので、触れ合い自体が珍しいわけではありません。しかし普段の診療は、その多くが命の掛かったのっぴきならない状況、そうでなくても小さくない問題を抱えた切羽詰まった状況です。しかも時間的な余裕もないことがほとんどでしょう。最低限の伝えないといけない説明も時に膨大になります。基本的なことからゆっくり説明する、というゆとりはなかなか持てません。そういう意味では、差し迫った問題もなくリラックスした雰囲気で、子どもに医療を体験して喜んでもらう、というのは個人的にも非常に楽しいものでした。他のスタッフもそのように感じていたようです。

 さて、このメディカル・ブート・キャンプの目的は、もちろん子どもに医療職を知ってもらうことなのですが、監修するにあたり、私はこれ以外に密かに2つの目的を持っていました。

 そのうちの1つは、非医療者と医療者における情報格差の解消でした。非医療者が、医学的な知識、しかも実践的な知識を身に付けることで、医療リテラシーを向上させ、少しでも情報の非対称性を解消し、医療の敷居を低くすることに貢献できないかと考えたのです。当然ですが、社会の医療リテラシー向上は診療上の説明の時間短縮も図れるし、避けられるべき医療訴訟の予防にもなります。何より社会の医療水準が向上し、国民全体の健康も増進できるでしょう。もちろんそこまで大それたイベントではありませんが、1つの目標として、そういう意図もありました。