ホスピタルアートは、医療機関の無機質な空間に美術作品を配置して患者の心を和らげます。一方で、絵画などの芸術作品を空間に展示するのではなく、先端技術を用いてデジタル形式で芸術作品を作るデジタルアートが広がっています。私は、そのデジタルアートを病院で展開する自分の活動を「デジタルホスピタルアート」と名付けています。

 医療現場に届けているのは、建物や物体にCG映像を投影するプロジェクションマッピングや、観客の動きに反応させるインタラクティブアートなど。患者さんやスタッフの反応を想像しながら、製作を続けています。

プロジェクションマッピングを用いたダンス対決のプロジェクト参加者。左から、ダンサーのIchiro、車椅子のダンサー少年tokio、筆者。

患者さんからもスタッフさんからも良い反応が!
 病院の病棟をイメージすると、白塗りの壁や、閉塞的な環境をなんとなく想像することが多いのではないかと思います。そういったイメージが強い病院に、デジタルアートという「魔法」を届けることで、患者さんに夢を思い描いてほしいという願いから、この活動を約1年前にスタートしました。

 身体可動性の制限がある方でも、最新のテクノロジーを用いれば、表現を拡張することができます。例えば自由に絵を描いたり、音楽を奏でたり、はたまた踊ってみたり……。そういったシーンが医療現場で当たり前になることも、ひとつの目標としています。

 医療現場で実際にデジタルアートの活動をしてみるまでは、単に患者さんの気持ちが明るくなったり、自分の病気を前向きに捉えるきっかけになればいいなと考えていました。しかし、デジタルホスピタルアートの活動は、患者だけでなく患者家族や医師、看護師、保育士などの医療スタッフからも大きな反応が得られることが分かってきました。

病院の壁に、プロジェクターで桜の木のCG映像を投影。桜の花の部分に手をかざすと、花びらが散るような反応をする。

 ある病院で壁に桜の木を投影し、そこに手をかざすと桜の花びらが散るように動く作品(これがインタラクティブアートです)を披露したときです。患者さんからは、笑顔が見られたり、普段はずっとこわばらせている筋肉をそのときばかりは緩めて手をかざし、一緒に作品を楽しんでくれたりという反応が見られました。終わった後にスタッフに抱き付いた方もいました。

視線の動きをセンサーで感知してカーソルを操作し、部屋の色を選ぶ作品。選んだ色をプロジェクターで投影し、部屋の色が変わったかのような体験ができる。

 ある看護師さんは、「季節を感じることが難しい病棟で、患者さんたちが桜を見ることができた」と喜んでくださいました。また、視線の動きでカーソルを移動させて絵を描いたり、部屋の色を変える作品を披露したときは、以前いらっしゃった患者さんを思い返し、「この視線で操作するセンサーが使えたら、筋力が低下しても自由にコミュニケーションが取れますね。俳句が好きな患者さんがいたとき、どうにかして書かせてあげたいなと思っていたんです」という話もしてくださいました。