とはいえ、すべての本の書評を書くのは難しかったので、入門書的な本を中心に書きました。推薦図書コーナーの本を読んで実際に本を購入した学生や、そこから勉強会に参加してくれるようになった学生もいました。

 推薦図書の選定はなかなか大変な作業でした。毎週のように主要な出版社のホームページをチェックしたり、実習中に先生たちに聞いたり、本屋に行ったりして材料を集めました。でも続けていると徐々に、どんな本を読めば知りたい情報が得られるのか、初学者が読みやすい本がどんな本なのかが分かるようになってきました。自分の中の“引き出し”が増えていくのが実感できる、やりがいのある作業でもありました。

 間違いなく、医学生や研修医に人気の参考書には、ハリソンなどの成書にはない良さがあります。成書は確かに大事で、常に立ち返るべき基本となるものですが、理解を深めるコツや現場で活きるちょっとしたポイントなどを学ぶには、評判の良い参考書の方が、いわゆる成書よりも効率的です。

神戸大学の推薦図書コーナー(2012年秋)。学生だけでなく研修医も利用する大きなコーナーに成長した。

 神戸大学の推薦図書コーナーは今、100冊を超える医学関連の良書や成書が並び、学生だけでなく研修医も利用する大きなコーナーに成長しています。

 規模が大きくなると管理は難しくなりますが、今は、各診療科にオススメ図書の寄贈をお願いし、先生方には主に成書を選んでいただき、学生(勉強会の後輩を中心に)からは主に人気の参考書が推薦されるような形で本の選定が行われています。現在の推薦図書コーナーの運営は、私が主催していた神戸大学の学生勉強会「ASMEK (Association for the Study of Clinical Medicine and Medical Education in Kobe-University)」の後輩たちが、教員や司書の方々と協力して行っています。

 推薦図書コーナーの設置ですぐに何かが劇的に変わるわけではありません。しかし学生が「勉強したい!」と思ったその貴重な瞬間に、いつでも背中を押してくれるような場があることは、とても大事だと私は考えています。“鉄が熱いうち” に出会った一冊の本が、その学生の考え方や、ときには進路すらも変えるかもしれません。皆さんの大学でもぜひ推薦図書コーナーを作ってみてはいかがでしょうか?