しかし、現実はそう単純ではありませんでした。4月25日には、日本学術会議から谷口プロジェクトの提案への反対声明( http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/shinsai/pdf/housya-k0425.pdf )が出されるなど、専門家の間でも、賛成派と反対派に分かれての対立が始まりました。ネットなどでその議論の様子を見ているうちに、疑問が沸いてきました。「当事者である原発作業員の方々はこんな方法があるということを知っているのだろうか? どうして当事者の目線での議論がなされないのだろうか?」

 そこで、医学生の会の運営スタッフ会議にこんな提案を投げかけてみました。「谷口プロジェクトについては、専門家の間だけでなく、一般の方や学生を交え、もっと色々な場所でオープンな議論があってもよいのではないか。医学生の会で何らかの企画を立ててこのプロジェクトのことを広めることに意義があるのではないか」―。

 実際にどういう形式で勉強会を実施するかを、スタッフ会議で検討し始めました。スタッフの一人が、谷口プロジェクトに賛成する先生方、反対する先生方に順次インタビューし、日経メディカル オンラインに記事を掲載する、という提案をしました。しかし私自身は、せっかくやるのであれば当事者を交えた議論の場を設けたいと思っていました。そこで、賛否両派の先生方、当事者である原発作業員の方、そして医学生の会スタッフ、という顔触れで議論することを提案しました。

立ち消えになるかと思われたが…
 しかしこの「円卓プラン」には心配がありました。立場の違うこの4者で議論したとして、場合によっては収拾がつかなくなるのではないか、と思われたのです。司会・進行役を務める私自身にも躊躇があり、自分のアイデアを強力に推し進めることはできませんでした。ここで企画の話は立ち消えになるかと思われました。

 6月になって、状況が変わるような出来事がありました。医学生の会は、以前、谷口プロジェクトの事務局を務める谷本哲也先生にお世話になったことがあったのですが、その谷本先生から医学生の会に対し、協力の要請があったのです。民主党の雇用対策ワーキングチームが谷口プロジェクトの公開勉強会を行うので、その議事録作成をやってほしいというものでした。

 その議事録(第1回http://www.savefukushima50.org/wp-content/uploads/TaniguchiProject20110624.pdf、第2回 http://www.savefukushima50.org/wp-content/uploads/TaniguchiProject0701.pdf )を作成しながら再び感じたのは、谷口プロジェクトについてメディアによる報道が少なく、あまりにも議論される機会が少ないのではないかということでした。そもそも日本の国民がこのプロジェクトのことをほとんど知らされていないという事実に疑問を感じました。

 私自身は谷口先生の提案する方法は画期的だと感じていました。しかしそれまでの動きを見ていて、この方法は果たして本当に良いものなのだろうか、良いものなのであれば、どうしてこれほどまでに反対されるのかをもっと考えてみたい。やはり、一般に公開された形で勉強会を開きたい。そう強く思いました。

 そこで私たちは谷本先生にお願いし、谷口先生にお会いする機会を頂きました。谷口先生に私達の考えをお伝えし、講演をお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。正直なところ、谷口先生は大変お忙しい身でいらっしゃるし、断られるのではないかと覚悟の上でのお願いでしたので、とても驚きました。

 その際に谷口先生から言われたのは、「このプロジェクトを通して、災害時に医療者は何ができるのかということについて考えてほしい」ということでした。