マッピング業務で現地の生の情報を整理
 被災地での活動の後方支援として、重要な仕事の一つがマッピング業務でした。現地に既に派遣されている先生からの情報を基に、各地の避難所における医療提供状況、被災地のライフラインや交通の復旧状況をGoogle Mapに登録し、PCATの先生方に役立てていただくという仕事でした。

 これも初めての経験でしたが、この作業を通じて、メディアの情報とはまた違った、被災地の生の情報に触れることにもなりました。この業務は原稿執筆中の現在(4月14日時点)も複数の学生によって続けられています。

 薬剤や検査キット、生理食塩水、ガーゼといった救援物資の管理も大変で、全国から大量に届く救援物資を、学会事務局の狭い部屋で仕分け、各地へ発送するという作業が数日続きました。この作業では別の学生がイニシアチブを取り、多くの学生が協力して進めてくれました。ボランティアには低学年の大学生も多く、慣れない薬剤の商品名や一般名、薬効などを一つひとつ調べながら仕分けていきます。

 糖尿病を基礎疾患に持つ被災地の方々にとって、彼らが送った血糖測定キットや血糖降下剤が救いとなったと知ったのは後のことでした。当時の事務局では、きっと被災地の方々のためになると信じて、学生ボランティアがみな黙々と物資管理の作業に取り組んでいました。

「PCAT」の名札・腕章が被災地の方に与える安心感

PCATから派遣される医師やスタッフが付ける名札と腕章

 事務作業はほかにもたくさんありました。例えば、派遣される医師やスタッフが付ける名札、腕章、名刺などの作成です。たかが名札や腕章と思うかもしれません。しかし、後に私が被災地に行って感じたことですが、避難所などでは「PCAT」と書かれた名札や腕章が、被災地の支援のために来ているという象徴になっています。それがあるから、被災者の方々も安心して悩みを相談し、信頼を寄せてくれるということは肌で感じました。

 名刺も、現地の医療ボランティア同士の連携をスムーズにするために本当に役立っていました。普段は名刺交換を一種の儀式としてしか見ていませんでした。名刺交換などしなくても、学生なら携帯電話の赤外線通信機能やメールのやり取りを通じて相手の連絡先は簡単に分かります。しかし、メールや携帯電話が使えず、時間も限られている被災地では、名刺がとても有用な情報ツールだったのです。

独自形式のカルテを作成して現地に

 被災地で使う「カルテ1号用紙」の文面や書式もPCATの事務局でデザインし、印刷して被災地に送りました。被災地には当然電子カルテはないし、プリンターや用紙の確保もままならなかったのです。

 カルテ1号用紙とは、紙カルテの表紙部分のことで、受診者の氏名、生年月日、住所などのほか、主訴、症状など最低限の診療情報を記入します。通常は「カルテ2号用紙」に、さらに詳しい診療情報を記入するのですが、この時点では1号用紙だけを使っていました。後に私が被災地に入った時点では2号用紙も使われていました。

PCAT事務局で作った被災地用の「カルテ1号用紙」です

 カルテ1号用紙に印刷する文面も、被災地の状況を思うと簡単には決まりませんでした。家を津波に流された避難所の方々の感情を考えたときに、住所を聞くことは果たして適切なのか、という疑問が出てきたのです。PCAT本部の先生と悩んだ末に、住所を具体的に書く欄を削除し、「現在お住まいのところ」として避難所、親戚宅、自宅などの中から選んでいただくことにしました(後に厚生労働省の通達で住所を記録することが義務付けられたため、住所欄は復活させました)。

 復興後に本来のかかりつけ医の先生に患者さんをお返しすることなども考慮して、かかりつけ医を記入する欄も準備するなど、今まであまり気にかけてこなかったような医療者や医療機関同士の連携という視点を学びました。