全員がチームリーダーのつもりで
 プログラムは亀田総合病院理事長 亀田隆明先生の講演から始まった。亀田先生はチーム医療の理念を、「患者さんが800人いれば800通りの医療が考えられ、800通りのチーム構成が必要になる。そのチームを率いるリーダーは、ときに医師でありときに医師以外であり、患者さんの状況に合わせて変遷していくものだ」と説明した。

 そのうえで、参加者に対し「チームリーダーに任せきりでは、いつまでたっても成長できない。自分がチームリーダーのつもりで考え、行動して欲しい」とのメッセージを送った。

 その後は、亀田総合病院の理念が各所に反映された病棟を見学した。床の材質や色を切り替えることで患者もスタッフも動線が一目でわかるようにしてあり、ベッドに変更できるソファやシャワールームを備え、患者さんだけでなく付き添う家族などにも居心地の良い設備となっている。また、透析センターの規模の大きさには、参加者から驚きの声が上がった。

 CSS(Clinical Skills & Simulation)センターでは、高機能の人体型シミュレーターのほか、気管内挿管、腹腔鏡操作、中心静脈カテーテル刺入操作などを24時間いつでも練習できる。「このような設備が自分の大学にもあれば」と感じた。

様々な職種の医療者と「チーム医療」についてディスカッションした

 このツアーでは、医療従事者と参加者が交流を深めるために、ディスカッションや懇親会の時間を長く設定してある。病院見学後のグループ・ディスカッションでは、亀田総合病院の医療チームのメンバーが互いの職種をどう思っているかを話し合ったが、ここでは色々な職種の方の生の声を聞けた。また、その後の懇親会では中国人・フィリピン人の看護師・スタッフやアメリカ人の医師といった、海外からの医療者とも交流できた。



互いに尊敬し合うことがチーム医療の基本
 このグループ・ディスカッションは、病院経営者、医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士、ソーシャルワーカー、管理栄養士、医療系事務職といった各職種のプロフェッショナルと交流する貴重な機会でもある。ディスカッションを通じて、各職種の必要性を再認識し、各々が互いの業務内容を認め合うことがチーム医療の前提として重要であると感じた。チーム医療の原点は、職種間で互いに尊敬し合うことだと気付かされた。

 冒頭の亀田先生の講演にもあったように、医療の現場では、場面によってリーダーシップを発揮すべき職種は違うということを、ここでも学んだ。例えば患者さんにとって医学的な問題がより重要な場面なら医師が、看護の問題がより重要な場面なら看護師がリーダーシップをとる、といった具合である。

 医師に求められる能力についても改めて考えさせられた。今までは、学力や知識がある程度、良い医師の指標になると少なからず考えていた。しかし今回の経験で、学力や知識はもちろん重要だが、それだけでは不十分であり、医師の知識を患者さんの利益として還元するには、「患者さんのために」という目的を追求し続ける信念と、「チームの雰囲気を作り、チームをリードする人間的な魅力」が必要なのだと痛感した。

 学生のなかには、例えば医学生と看護学生の間に少なからぬ誤解があった。医学生の中には当初、看護師の役割を「医師の補助」ととらえる雰囲気もあった。しかしこのツアーを契機に、看護師は決して医師の補助役ではなく、共に医療を進めていく上でのパートナーであるという認識が、参加者の間で共有されたと考える。この経験を生かし、医学部生だけでなく、様々な医療系学生たちと交流しながら、今後も医療のあり方について考えていきたい。