今回は、キャリアを考える上で欠かせない「専門性」について考えていきたいと思います。

 「余人をもって代えがたし」と言われるほど、高い「専門技能」を持てば、キャリアにとっては有利に働きます。当然これは医療の世界に限ったことではなく、どの業界でも「専門性」は重要な要素となります。では、私たち医師が「専門性」を高めるにはどうすればいいのでしょうか?

 「専門性を高める」=「専門医(スペシャリスト)になる」。多くの人がこう答えるのではないでしょうか。一意的には正しいと思います。しかし、私はこうした場面で語られる「(狭義の)専門性」と、本来の意味での「専門性」には少しギャップがあると考えています。そのことが「『ジェネラリスト』と『スペシャリスト』、どっちが有利か」といった本質的ではない議論を生み出しているような気がしてならないのです。

専門性は「掛け算」で決まる
 人材論・組織論の世界的権威であるリンダ・グラットン氏は、その著書「ワーク・シフト」の中で高い価値を持つ「専門技能」の3つの条件を「その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること」、「その技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っていること」、「その技能が他の人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくいこと」と提唱しています1)。それを踏まえて、私が以下のように図式化してみました。

専門技能 = 社会貢献性 × 希少性 × 代替不可能性
(それ、どれだけ世の中に必要とされてるの?)×(それをできる人はどれだけ少ないの?)× (それ、他の人が真似することはどれだけ難しいの?)


(イラスト:鈴木裕介)

 要は、社会からすごく求められ(社会貢献性)、ごく少数の人しかできず(希少性)、他の人が真似できないこと(代替不可能性)が高い価値を持つ専門技能であり、それを身に付けている人は専門性がものすごく高いのでキャリアとして超強いですよね、という話です。

 上記の式に当てはめて考えてみると、野球のイチロー選手や宇宙飛行士の専門性は極めて高いと言えるでしょう。一方、鼠先輩のモノマネが宇宙一上手い人がいたとしても専門性が高いとは言えないでしょう。どんなに精緻で高度な技術であったとしても、鼠先輩のモノマネは今も昔も社会があまり必要としてないからです。ピコ太郎だったら今は分かりませんが!

 「専門性」を高めようとしたときに、今ある制度の枠組みを前提に将来のキャリアを考えることはリスクとなります。なぜなら、「専門性」の高さを定義する要素は時代とともに変わるからです。もちろん、専門医制度を含む現行の制度そのものを否定しているのではありません。ただ、制度というのは時代の変化の後追いをしていくものですから、タイムラグが出ることは意識する必要があります。