「病気というわけではないから」と我慢しがちな妊婦さん
 避難所となっている小学校に到着し、救護班の方にPCATで以前問診したことのある9人のうちのお1人について尋ねました。「ああ、○○さんね。心配ないですよ。3日おきに血圧と体重をフォローしています」、というお返事に、まずは一安心しました。

 せめてご挨拶をして帰ろうと、保健師さんに連れられて体育館の隅を訪ねました。この方はこの時点で36週で、これまでに2回の正常分娩を経験されています。医療品が山積みになっているような大きな避難場所なので、医療に関しては問題ないだろうと思いながらも「いかがですか。便秘などありませんか」とお聞きすると、驚いたことに、「5日に1回しか出ないんです…」と恥ずかしそうに、話されました。そこで腰痛や体のかゆみについて聞くと、どれも当てはまると言うのです。

 長期間冷たく固い床で寝泊りしていて、お風呂にもなかなか入れないため、聞けば聞くほどマイナートラブルがたくさん出てきました。同席してくださった保健師さんによると、今まではこの妊婦さんに「体調はどうですか」と聞いても「大丈夫です」と答えていたそうです。

 私自身、4回の妊娠・出産で、およそ考えられるありとあらゆるマイナートラブルを経験しています。マイナートラブルが妊婦さんの日常生活に与えるインパクトは、ある意味メジャートラブルよりも大きいぐらいだと思っています。しかし、身体にかなりのストレスがかかっていても、「病気というわけではないから」と我慢してしまう妊婦さんが多いのです。

 「それはお辛いですね」と、持参した妊婦さん用の便秘薬(プルゼニド、マグラックス)や、シップ薬(モーラステープ、セルタッチ)、痒み止め(キンダベート軟膏)などを渡しました。また、避難所の救護室には尿蛋白を検査するウロスティックがないと知り、それもお渡ししました。「お守り代わりにして大切に保管します」と言う言葉に、来てよかった、と思いました。

 医師に相談しても「妊娠中はお薬が使えないからね」「妊娠しているから仕方がないね」と言われ我慢していたとのことです。産婦人科以外の医師であればやむを得ないことだと思いますが、我慢強い被災地の妊婦さんたちに何とかサポートの手が届かないものかと歯がゆく感じました。

小学校2年生のお嬢さんが、おじいちゃんのお誕生日にと作ったバースデーケーキです

 その横で、小学校2年生になるお嬢さんが、おじいちゃんのお誕生日にと、プラスチックのお椀を逆さに伏せ、その上に折り紙で作ったろうそくを立てて、バースデーケーキを作っていました。ちょうどこの日がおじいちゃんのお誕生日とのことでした。「子供の存在、子供の発想は、みんなに喜びを与えるんだ」と、心から思いました。

 この妊婦さんからは、その後も何度か相談のお電話をいただきました。分娩前後は親戚の家に身を寄せるつもりだけれど、それまでにライフラインが回復しているかどうか、上のお子さんたちの小学校のことやお子さんの友達がいるのでこの地方に帰って来たいということ、先の見えない状況で悩み事は尽きません。

 繰り返しになりますが、妊娠中の女性は我慢強く、医師の前ではあまり不満を言いません。しかし、話しかた次第でニーズをつかむことができます。被災地の妊婦さんの置かれている環境や抱えている問題を認識した今、自分がこれからどのようなコミットをしていくかが、重要だと思っています。

 すぐにできることとして、まずは、これから被災地で妊婦さんの診察にあたる医療従事者の方に、役立つと思われることをまとめました。よろしければご参考になさってください。