気仙沼の仮設住宅にて。現地の自治会長さん、中間支援者の村上さん、ボランティアスタッフと。後ろには大漁旗がはためいている。

 ただし、「地域住民の健康増進とコミュニティ形成」という視点で考えると「カフェ」や「お茶っこ」といった“仕掛け”が必要でした。運良く、早い段階でカフェビジネスをやっている方とつながりができましたが、普段から、若き起業家たちが集まる会などに足を運び、ネットワークを広げる努力をしていたことが功を奏しました。

 活動を開始してからのハードルは、地元行政や保健師との連携の問題でした。仮設住宅の自治会と直接交渉して活動を開始したため、行政からの正式な許可は得ていませんでした。2011年10月以降は、正式に行政を通す必要があると言われ、継続できるのかどうか不安な時期が続きました。

 この問題は結果的に、活動を継続しながら徐々に行政からの信頼を得ていくことで解消しました。健康カフェなどで気になった方を見つけては地元の保健師に報告したり、逆に、行政から依頼されて別の仮設住宅にもアプローチしたり、という理想的な形で連携できるようになったのです。

 活動の終盤で感じた難しさは、地元の方たちの「自立」に向けた気持ちに応じて、どんな風に自分達の活動形態を変えていくべきか、ということでした。震災から1年が過ぎた頃、仮設住宅の方々は、自立したい気持ちと、自分たちだけでやっていけるか不安な気持ちの間で揺れていました。2012年2月後半に、自治会長などにヒアリングしたところ、「いつまでも厚意に甘えるわけにはいかないし、もう自立の時期になっている」と言う意見や、「皆、普通に暮らしているように見えても、身体や心の問題を抱えているので、医師が参加する形での健康相談は続けてほしい」という意見など、様々でした。地元の方々の自立を促しつつ、寄り添い、支援することの難しさを感じました。

 2012年4月、PCATとして一定の役割を終えたと考え、「健康カフェ」プロジェクトは一旦終了となりました。

ここまで継続できるとは思わなかった
 「健康カフェ」プロジェクトによって得られたアウトカムは、以下の3つだと考えています。

(1) 医療従事者による、継続的な傾聴および健康相談の実施
(2) 医学的にケアが必要な方の拾い上げと、保健師や現地医療者への橋渡し
(3) 仮設住宅における交流の場づくり(コミュニティ形成)

 この3つは、活動開始当初に掲げた目標ですが、そのどれも長期にわたって継続できたことに、今さらながら驚きを覚えます。これも、このプロジェクトにかかわってくれたすべてのスタッフの努力と、地元の方の協力の賜物と思います。

 最後に、これまでPCAT健康カフェ・プロジェクトに御協力いただいたすべての方々、特に4カ月以上の長きに渡り現地での活動を続けた臨床心理士の浅見大紀氏、また仮設住宅の自治会の方々、アンカー・フルセイル・コーヒーの小野寺紀子様、中間支援で大いに活動を助けて頂いた気仙沼の村上充様に深い感謝の意を表したいと思います。