こうした活動の中で、著明な高血圧の方(未受診や通院中断例を含む)、精神心理症状のある方(抑うつ、PTSD、不安障害、不眠症、アルコール依存症など)、DV(ドメスティック・バイオレンス)が疑われる例、経済的問題を抱えた方などをピックアップし、現地保健師やソーシャルワーカーに報告して、連携して対応に当たることができました。また、司法書士とも協力し、一部の方については、法律的な相談にも対応しました。

住民の方の話を傾聴した上で、健康面で色々なアドバイスをする福井医師。

 冬になると、健康相談だけでなく健康教育も実施するようになり、「高血圧の予防」「生活不活発病」「インフルエンザなどの感染症予防」などについて話をしました。

 驚いたのは、血圧が高い方がやたらと多いことでした。いつもお世話になっている仮設住宅の自治会長さんの血圧を、ある日測ってみたら200を超えていた、ということもありました。「震災後に血圧が高くなった」という方も少なくなく、やはり高塩分食や寒さ、そして狭い生活空間や運動不足、様々なストレスなど、震災後に生活状況が大きく変化したことが影響していたと思います。

めまぐるしく変遷する住民の健康問題
 もう一つ驚いたことは、仮設住宅における人々の心理状態やニーズの変化のめまぐるしさでした。健康カフェを開始した2011年8月時点では、仮設住宅の暑さや熱中症などが住民の心配の種でしたが、9月になるとすでに、冬の寒さを乗り切れるどうか、どこまで雪が積もるのか心配、と話す方が増えてきました。被災した方の多くは沿岸部の出身ですが、沿岸部は、冬でも積雪しないところが多いのです。

浅見心理士による好例の「あざみん体操」の時間。家庭医による生活不活発病予防の話とともに、一緒に体を動かしてみることが有効。

 10〜11月になると、被災体験を口にし始める方が多くなりました。我々との信頼関係ができてきたこともあるでしょうが、半年以上が過ぎて、ようやく震災当時のことを言語化できるようになってきたと言えるでしょう。

 年末になると、仮設住宅の自治会スタッフの方々の心理的な疲労が見えてきました。「寒くなってきて気持ちが落ち込むことが多い。衣替えをしていたら、逃げてきた当時の服を見つけてしまったり…」と語っていた女性のことはよく覚えています。この頃から、自治会の方など“地元の支援者”に対しても特に心を配り、ケアする必要性を強く感じるようになりました。

 冬になると、健康カフェの参加人数が徐々に減ってきて、それが懸念材料になりました。事情を聞いてみると、家に引きこもりがちになっていた高齢者(特に男性)が多かったようです。また、朝からお酒を飲んでいて、アルコール依存症が疑われる男性や、DVなど、重大なケースの相談も増えてきました。このようなケースについては、PCATの臨床心理士が、行政スタッフである「応急仮設住宅入居者等サポートセンター」の職員の方々と一緒に、気になる人を個別訪問する活動を開始することで、わずかな件数ではありますが、アプローチすることができました。

継続できるのだろうか…一時は不安も
 今回のようなプロジェクト活動が可能になった背景として、まず挙げられるのは、現地のニーズをはっきりと認識できたことです。また、そのニーズに対応するためのリソースがそろっていたことも幸いでした。昨年7月に仮設住宅に足を運び、初めて被災者の方の声を直接聞いたとき、「PCATなら、医療従事者、それも複数の専門家(医師、看護師、臨床心理士など)をすぐに派遣できる!」と思いました。