2011年の5月中旬、宮城県石巻市内では、7000人を超える被災者が学校や公民館など100カ所超の避難所で生活していました。私の被災地支援生活も1カ月半になろうとしていました。沿岸部では衛生環境を改善するため、汚泥をかき出した跡に消石灰をまくといった活動が懸命に行われていましたが、夏も近づくこの時期、悪臭や蝿の発生が気がかりでした。

 私は理学療法士として、PCATの支援活動の一つである、福祉的避難所「遊楽館」の運営に携わり、避難所内の住環境の改善や、避難者の体力低下を防止するための運動支援などを行っていました。災害急性期が過ぎ、寝食が落ち着き始めたこのときになって初めて、「布団を一度も干していない」ということに気づきました。

写真1 遊楽館中庭で、医師や看護師も総出で布団干しをしました

布団が溶けるほどのカビが・・・
 雪が降る3月11日以降、被災者の身体を暖めるために全国から集まった寝具は、災害毛布、中古の支援品、新品の毛布など様々でした。このほかに、被災者が自宅から苦労して持ち込んだ寝具もありました。遊楽館では、一人当たり6〜8枚の寝具を支給されている状況でした。

 まずはできるところからと、晴れた日に遊楽館敷地内の中庭で布団を干してみました(写真1)。発災から2カ月間、万年床状態にあった寝具の中には、すでにカビが発生している布団も見られました(写真2)。

写真2 左:カビの生えた布団。右上:布団が溶けるほどのカビも。下:カビだらけになった保育園の壁

 しっかり掃除していた遊楽館でも布団がカビ始めているとなると、他の避難所では、もっとひどい状況かもしれません。不安になり、他のボランティア団体の人たちに、他地域の衛生状況などを聞いてみると、粉じんや悪臭の問題も深刻なために、換気もままならない避難所もあるとのこと。

 決して清潔とはいえない場所に布団が敷かれ、晴れた日でも布団を干せる場所がないという被災地特有の事情により、どこの避難所でも、万年床が共通の問題になっていることが分かりました。しかも、梅雨や夏が迫っています。くよくよと考え悩んでいる暇はありませんでした。

 「石巻圏合同救護チーム」を統括する石巻赤十字病院の石井正医師と、感染対策担当の看護師さんに相談したところ、これは公衆衛生上、重大な問題であるということで認識が一致し、避難所の衛生環境を改善するための活動を立ち上げることが決まりました。

 しかし、活動を始めようにも、人手も物資もノウハウも何もありません。遊楽館のように天日干しをするには、粉塵や悪臭の影響を受けない郊外に広大な敷地が必要になります。しかも天候に左右されながらの作業です。布団乾燥機を使うにしても、停電している避難所もあり、電源の確保が必要になります。