3月11日の大震災から半年が過ぎた9月、プライマリ・ケア連合学会による被災地支援活動の一つである産婦人科支援チーム「PCOT」(Primary Care Obstetrics Team)の関係者などを集めたワークショップが、東京で開催されました。

 PCOTの半年間の活動や出来事を振り返り、それぞれの立場から語り、今後どうしたいか、そのためにはどんな取り組みが必要なのか、といった議論をすると共に、半年間の苦労をねぎらい、親睦を深めるために企画されたものです。

 当日はPCOTから派遣されて支援活動に従事する医療従事者だけでなく、被災地で母子保健活動に携わる地元の方も多く招かれました。私は産婦人科医として石巻市でPCOTの支援活動に携わったことから、今回参加させていただきました。

 今回のセッションで改めて気付いたことも多く、この場でご報告したいと思います。

PCOTワークショップの光景。中央は石橋副理事長

 会場では一つひとつのテーブルに6〜8人程度が着席し、テーブルごとに話し合いを進めました。自己紹介に始まり、「5年後に自分はどうなっていたいか」「現在行っている活動とその課題、そして対策」といったテーマで各人が語りました。

 一つのテーマについて話し合う時間は長くて30分程度。次のテーマに移る前に、各テーブルのファシリテーターが、話し合われたことを発表し、これに対して、リーダー役を務めた日本プライマリ・ケア連合学会副理事長の石橋幸滋先生がコメントする、という形で進行しました。

被災地のリーダーたちの苦悩とは
 PCOTが展開する主な活動の一つに「東北すくすくプロジェクト」があります。「ストレスの多い環境にある東北の妊婦さんや新米ママさんに寄り添い、赤ちゃんたちがすくすく元気に育つためのサポートを行うこと」を目的とした、母子保健支援の取り組みです。震災によって失われた、母子保健施設や医療機関といった施設の再建や、それらの機能の復旧支援のほか、プレママ、ママなどが集まってサークル活動などをしている地元の方々の支援も行っています。例えば、子育て相談会の企画や、相談会への医師、助産師、栄養士などの派遣といったことがあります。

 今回のワークショップは、こうした活動に携わる地元のリーダーの方々のお話を聞くまたとない機会となりました。

 「被災地でコミュニティ活動のリーダーをしている」と聞くと、普段から社会貢献などに熱心に取り組んでいる方、という印象を持つ人が多いと思います。私にもそんな印象がありました。しかし、実際にそういう立場の方からお話を聞くと、必ずしも最初からリーダーになることを志向していたわけではない、ということが分かりました。

 「震災前はママサークルや育児支援といったコミュニティー活動の1参加者に過ぎなかったが、リーダーや幹部が震災で亡くなってしまって」「地域の1医療従事者という立場だったのが、その地域のお産や母子保健を担える人が多数被災した結果、自分一人になってしまった」・・・。これらの方々は、自らも被災者でありながら、「今、ここでその役割を担えるのは自分しかいない」という理由で、リーダーという初の役割にチャレンジしているのです。本当に頭が下がる思いでした。

 震災は母子保健にかかわる病院、診療所、子育て支援センターなどの「拠点」、そして人と人がつながる「ハブ」の役目を果たす人、そしてそれらが結びついた「ネットワーク」を破壊しました。その結果、お産場所がない、ちょっとしたことを聞ける人がいない、募る孤独感や不安感にどう対処すればいいか分からない、といった問題が表出し、震災から半年以上経った今も続いています。