「PCATの方に是非来てもらいたい!ここは高齢者も多くて心配なんです」

 とある仮設住宅でボランティア青年Iさんから聞いたこの言葉が始まりでした。「健康カフェ」開催にこぎつけることができたのはそれから3週間後の8月21日のことです。色々な方との偶然の出会いも重なり、多くの方の協力を得て実現しました。

「健康カフェ」の案内チラシです。事前PRは主に口コミで行いました。

 震災が起きて4カ月が過ぎた7月末、宮城県にPCATの一員としてボランティア支援に入った私を待っていたのが、仮設住宅でのIさんとの出会いでした。

 たまたま新生児訪問でその仮設住宅を訪れたPCOT(PCATの母子支援チーム)の助産師さんから「医療系ボランティアの方に来てもらいたいようだ」との話がありました。

 それまでPCATの活動は、避難所での医療支援などが中心でしたが、すでに各地の避難所は閉鎖に向かっており、今後は、仮設住宅に移った被災者への支援ニーズが高まるだろうと考えられていた時期でした。「すぐに行ってみよう」と、その翌日に私と看護師、助産師で訪問しました。

 訪問先の仮設住宅では、仮設住宅が建設された当初からボランティアとして入っているIさんをはじめ、民生委員経験者など現地の方が数人で、自治会を作っていました。

「実現できるよう頑張ります!」
 Iさんは山形から来た農業系ボランティアとして、塩害にあった土の中性化や緑のカーテンを作るお手伝いをしながら、住民のために様々なサポートもしていました。集会場の運営のお手伝いをはじめ、子供たちの遊び相手や、ときには家庭教師になることも。「本当に一生懸命に私らのためにやってくれて…」と地元の方に感謝されても、謙虚な姿勢のままでいるIさんに、私は誠実さとボランティア活動にかける真剣さを感じました。

 現地の方からは、高齢者の世帯が多いこと、医療機関への交通手段が限られていて不安があること、夏場の熱中症など急病の不安、孤立している世帯もあることなど、様々な心配が聞かれました。

 「お医者さんや看護師さんの顔をときどき見られるだけで、みんな安心すると思うんですよね」と、切々と語られたIさんに、私は思わず「実現できるよう頑張ります!」と答えていました。

 最初の派遣期間が終わり、東京に帰って来てからも、私の頭からはIさんや現地の人々のことが離れませんでした。あの仮設住宅の人々の元へ、また早く行かなければと思い、PCAT代表の林健太郎医師や他のスタッフと相談し「健康カフェ・プロジェクト」チームを立ち上げました。

 健康相談が主な目的ではありますが、仮設住宅の中に引きこもりがちな人たちも引っ張り出す仕掛けとして「お茶っこ」、つまりお茶やハーブティーなどが無料で飲めるイベントにしよう、ということになりました。「お茶っこ」というのは、近所の方々と漬け物や煎餅でお茶を飲みながらおしゃべりを楽しむという東北地方の文化だそうです。

 数百杯分ものお茶やハーブティーを提供できる方を、大急ぎで見つけなければなりませんでしたが、ここで偶然にも、福島県出身で被災地支援に熱心に取り組まれている会社員Tさんの紹介で、東京都北区で「ゆるベジCafe」の店長をされている坂田穣さんと出会いました。坂田さんは、お会いしたその日のうちに「やりましょう!」と言ってくださいました。

地元の方がこんな張り紙を用意してくださいました。

「全然来なかったらどうしよう」
 8月21日、いよいよ健康カフェ当日を迎えました。PRの手段は主に現地のIさんたちの口コミです。開催場所は仮設住宅の集会場で、入口には地元の方が書いてくださった「PCATの方とお茶っこ&健康相談」の文字がありました。

 PCATスタッフからは、医師(私)、看護師、薬剤師、臨床心理士などの6人が参加しました。さらに法律相談もできるよう司法書士さんもお呼びしました。そしてカフェのスタッフとして参加した坂田さんほか2人を入れて、計11名の体制で臨みました。