4月と5月に被災地へ派遣していただいたことが発端となり、現在、日本プライマリ・ケア連合学会の被災地支援プロジェクトPCATで、被災地の周産期医療や母子保健を支援する活動をお手伝いしています。今日は、危機的な状況にある東北のお産について皆さまにお伝えしたいと思います。

 6月14日のことです。宮城県石巻市内で唯一、診療と分娩取り扱いを再開した「あべクリニック産科婦人科」院長の阿部洋一先生から、分娩が非常に増えて困っている、土日の当直医をお願いできないかという打診がありました。

4月下旬、診療再開にこぎ着けたばかりのあべクリニック産科婦人科を訪問したときの写真です。中央が阿部先生です。

 震災前の石巻市では、石巻赤十字病院と4軒の開業医で月間150件のお産に対応していたそうですが、開業医のうち2軒が津波で流されて廃院になり、残る1軒は外来診療だけを再開した状況で、分娩取り扱いは7月か8月からになる見込みです。このままいけば、あべクリニックは6月から8月にかけて、震災前の2倍のお産を受けなければならなくなるとのことでした。

 相談を受け、学会や大学の医局に相談してみたのですが、どちらも人手不足で支援を受けることは困難でした。しかし、石巻の産科医院を救うことは、震災後の公衆衛生の見地からも、震災前から医療崩壊の危機にあった東北地方の周産期医療の状況から見ても、極めて重要です。ローリスクのお産を受けてくれる開業医がいなくなれば、ハイリスクのお産を扱う石巻赤十字病院がパンクしてしまいます。

 ただでさえ、石巻赤十字病院は震災後、震災前の2倍にあたる月間100件のお産を引き受けている状況にあり、特に6月中旬に東北大からの応援が引き揚げた後は、悲鳴を上げている状態です。産後入院も3日間に制限されました(震災直後は2日でした)。これでは十分な周産期ケアを提供できません。

 考えてみてください。もし、あなたの奥さんやご家族、ご友人が「車で2時間以上かかる中核病院しか分娩の場所がない」と言われたら。外来でも、入院中も、満足に話を聞いてもらえなかったら。困ったときに相談できる人がいなかったら。

全国の産科医の皆さまに
 短期間でも安陪先生を手伝えるという方がいらしたら、是非PCATの問い合わせフォーム http://pcforall.primary-care.or.jp/entry/までご連絡ください。その際、「その他特記事項」の欄に「産科支援」「産科当直業務」などと書いていただければ、こちらから詳細をご連絡差し上げます。

 当直料や必要経費については、幸い、複数の団体から助成をいただき、PCATからお支払いできる状況になりましたので、無給とか、手弁当といったことはありません。興味を持たれた先生方、是非ご連絡いただければと思います。

 阿部先生からのお便りの一部をご紹介します。

〜前略〜

 今後の分娩予約数もやはり増加傾向にあり、特に8月以降は、
果たして持ちこたえられるだろうかという不安と、今ごろになって出てきた疲れから、
そろそろ仙台の医局に手伝いを依頼しようかと考えていたところでした。

〜中略〜

 勝手な小生の希望でありますが、月2〜3回の土日のサポートを頂ければと
思っておりますが、来て下さる先生のご都合次第でそれにこだわるわけではありません。
「このようにして下さい」「この条件なら来られます」ということを
遠慮なくお申し付け下さい。

(最後に休みを取ったのが思い出せないくらいで、いままで医局の厳しい状況で
せいぜい年数回の休みでしたから、土日だけのサポートでも夢のようです)

 土曜日の13〜14時から日曜の夕方までとも考えていますが如何でしょうか。


ボランティアだけでなく継続性ある仕組みを
 東北のお産を救いたい―。そのためには、無償あるいはそれに近いボランティアだけでなく、産科医にアルバイトとして報酬をお支払いすることで、継続的に応援に来ていただけるようにする必要があるのではないか。被災から3カ月が過ぎたいま、こんなことを考えて動き回っています。悲鳴を上げているのは石巻だけではありません。気仙沼もその他の多くの被災地も、通常ならありえないような体制で周産期医療を続けているのです。

 被災地入りすることに対するためらいもあると思いますが、応援に来られる産科医の方々のモチベーションは人それぞれでよいと思います。報酬ももちろんあるでしょう。そのほかに、ご自身の経験を高めること(家庭医の産科研修などもあり得ると思います)や被災地での調査、あるいは、医師として人として一度は被災地に行っておきたい・・・など、それぞれの目的で来ていただければと思います。