このたびの東日本大震災は、地球の裏側のボストンにいる私たちにとっても、とても他人事ではありません。私たちの家族も友人も、東京と近郊に大勢住んでおり、客観視することは不可能です。津波とその後の惨状を見て、言葉を失わない人はいないでしょう。それはアメリカ人も同じです。

 ボストンでは、ハーバード大学をはじめ、あらゆる学校、会社、コミュニティーのレベルでの義援活動が盛んになっています。私の勤めるマサチューセッツ総合病院でも、娘の小学校でも、募金活動が行われています。一般市民の関心は非常に高く、家族を失ったり避難所生活を強いられたりしている方々に、アメリカ社会全体が深く同情しているのを感じます。

 同時に、福島第一原発の事故に関しては、日本政府側の情報開示に対する不満が募っているという論調の報道が目に付きます。この文章を書いている時点では、放水による原子炉の冷却が難航しており、予断を許さない状況です。このような非常時には、不安を煽らない報道姿勢が求められることはよく分かります。政府の対策本部や東京電力の会見を聞いても、余計な不安を煽らないことを第一に考え、慎重に言葉を選んでいるように感じます。

 しかし、正確な情報が迅速に提供されないと、風聞に基づく出所の不確かな憶測で一般市民が翻弄されることになりかねません。アメリカが政府関係者を含む自国民に日本からの国外退去を促したという一件には、アメリカ人一般の原子力事故に対する敏感さが見て取れるとともに、アメリカ政府が日本政府の発表に対して疑心暗鬼になっているという状況も透けて見えます。

 日本人でも首都圏を脱出する人が出てきているという話も聞きました。アメリカでは放射線障害予防薬の安定ヨウ素剤の買い占めも起こっており、東海岸のボストンでも既に手に入らない状況です。この辺りの行動はどこの国民も同じでしょうが、情報の開示不足が原因の1つと言えるかもしれません。

 アメリカのメディアでは、一歩進んで、情報の不足を客観的な情報で補おうという努力もみられます。例えば、スリーマイル島原発事故に立ち合った技師の話や、福島第一原発で使われているゼネラル・エレクトリック(GE)社のMark 1という原子炉の設計上の問題点などから、今回の事故の原因と解決策を探るような報道です。オバマ大統領は原子力発電を、二酸化炭素を出さない「クリーン」エネルギー政策の目玉と位置付けており、その意味でも、今回の事故はアメリカにとって「他人事」ではないのです。

 原発の大事故は、一企業や一国だけの問題ではとどまりません。ある意味では地球規模の問題だと思います。アメリカをはじめ、各国が支援を表明しているようですが、事ここに至っては、世界中の国の力を借りてでも、何とか事態を早急に収拾してほしいと心から願っています。