さらに、前屈みの姿勢では、外頸静脈も圧迫するので、頭部からの血流還流が滞り、うっ滞してしまいます。顔の「循環不全」は、ウイルスなど外来微生物の排除や、免疫反応、新陳代謝のいずれにおいても、決定的に不利です。私は、頭部血流のうっ滞も、かぜの発症要因として、大きな一因を担っていると考えています。

 加えて、患者さんには、寝るときの姿勢を尋ねます。「仰向けで、大の字で」寝ている人は、皆無です。ほとんどが、横向き、うつぶせ寝が多い、と答えます。横向きで寝れば、下側の鼻が詰まるのは、皆さん、ご経験済みのことと思います。「鼻が詰まる→苦しくて口が開く→口呼吸」の図式は、明白です。うつぶせなら、なおのこと、気道が圧排されます。そして、当然、外頸静脈も圧迫され、頭部うっ滞が起こり、かぜの発症に寄与します。

 患者さんには、ただ「姿勢を正して」と言うだけでは、ピンとこないことが多いようです。そこで、「お侍さんや、茶道の先生を思い浮かべてください」と具体的なイメージを促し、「お腹に力を入れ、胸を張り、アゴをひいて、視線は決してうつむかず、凛とした姿勢ですよ」と説明しています。そして、家に帰ってからやるのではなく、診療後ただちに、院内での待ち時間を利用して、姿勢を正し、鼻呼吸をするということに集中してみては、ともお勧めしています。

 ちなみに、「かぜにマスク」は、本当に正しいでしょうか。マスクをすると、鼻を覆うので、苦しくて、口が開きます。マスクをしているという安心感もあって、ぽかんと口が開くこともあります。口が開けば、やはり、口呼吸が習慣となり、かぜが一向に治らず、咳込み続けることになります。周囲への感染予防という点では、マスク着用は仕方ないかもしれませんが、必要性のないとき、例えば就寝時や、人ごみから離れたときには、マスクは「はずす」ことを、お勧めします。

 被災地でも、かぜに苦しまれている方が多いことと存じます。薬がなくてもあわてずに、今、すぐに、自分で、姿勢と呼吸を見直してみる。これだけでも、ずいぶんとかぜの回復は早まることと思います。皆様のご健康を、心からお祈りいたします。