【ホスピタルショウ】医療現場でタブレット端末を効果的に活用

「国際モダンホスピタルショウ2011」カンファレンスレポート

在宅医療の現場でiPadの活用例を紹介した伊都医師会「ゆめ病院」の小西紀彦氏

 また、救急隊員のアンケートからは「受入病院を探す際に検索機能に助けられた」「どの病院に搬送が集中しているか一目で分かり、搬送先決定までの時間ロスが少なくなった」という声。医療機関からは「他の病院の受入状況や地域の現状が初めてわかった」「他の病院の受入状況を意識するようになった」という声があったと紹介した。

●医師や訪問看護師の在宅医療で有用性が高いiPad

 伊都医師会「ゆめ病院」初代院長の小西紀彦氏は、地域医療連携の仮想病院「ゆめ病院」で、医師の往診、訪問看護ステーションの訪問看護の際にiPadを利用したケースを紹介した。「ゆめ病院」は、和歌山県橋本市と伊都郡の両地域の医療を担う伊都医師会が、2002年にスタートさせたインターネット上の仮想病院。長期にわたる医療情報の蓄積保存が可能な医療情報データベースを中核に、現在は医師会、診療所、中核病院、訪問看護ステーション、薬局などの情報共有システムとして利用されている。

 小西氏は「ゆめ病院」について、「日常診療中に活用できるツールであること、診療中でも入力負担が少ないこと、療養指導などに役立つ機能を持たせる、地域医療連携に有効に活用する、開業医からの臨床報告にも応用したいといったコンセプトで、5回のバージョンアップをしながら機能追加、改善を繰り返してきた」と述べた。

 主な機能として、ゆめ病院共通の患者IDの発行と、主要病名、処方内容、禁忌・アレルギー情報、検体検査結果、医用画像、血圧(家庭での測定データからの転送機能あり)、健康記録などが登録・参照でき、各医療施設で情報を共有している。

 iPadは、医師の往診の際に患者宅から「ゆめ病院」にアクセスして経過記録を参照しているほか、患者への説明時に利用しているという。また、訪問看護ステーションでは、実際に訪問看護の際にiPadを携行して、各ステーションに提供した情報を看護に活用している。今後はかかりつけ薬局の薬剤師が在宅療養者に薬剤を届ける際にもiPadを活用し、患者情報の参照と服薬指導などに利用していく。

 最後に小西氏はiPadの有用性について、「どこでもMY病院という言葉があるが、iPadによって『どこでもMY診療』が可能になる。往診先での利用、症例検討会での利用に加えて、急な夜間外来でも素早い起動で操作できるiPadは、情報閲覧や処方などが手早くでき、非常に手軽に使える」と利用の感想を述べた。

●解剖実習の現場で有用性を発揮するiPod touchによるCT画像参照

解剖学実習でのiPod touch活用の実際を解説する群馬大学大学院の村上徹氏

 群馬大学大学院の医学系研究科機能形態学准教授の村上徹氏は、「OsiriXを使った人体解剖とCTの統合による先駆的医学教育」と題して、人体解剖実習でiPod touchを活用している事例を紹介した。

 現在、人体解剖学実習では、献体された遺体をCT撮影後読影医のレポートを学生に配布して、CT画像を参照しながら解剖を実施している。その際に、CT画像データをiPod touchに入れて学生に貸し出し、DICOM画像処理ソフトウエア「OsiriX」(オザイリクス)を利用したスライス画像や立体構成画像と解剖体を比較している。

 OsiriXはMacやiPhone、iPadのiOS上で利用できるが、解剖実習でiPod touchを採用した理由を村上氏は、「解剖実習は4人1組で1体の解剖を行うが、解剖台が並ぶ実習室は広いスペースでなくモノが置けないため、白衣のポケットに入れたり、解剖体の隅に置けたりできるiPod touchほどの大きさのデバイスが最適。画像を見ながら4人でディスカッションする際にも、手軽に利用できる」と説明した。

 また、解剖実習では単にCT画像だけを与えても学習成果が得られないため、課題を与えているという。例えば、「読影医によるCTの読影結果、自分でCT画像から推測したこと、実際に解剖してわかったことを比較考察せよ」といった課題を与え、CTのスライス画像と対比させた解剖体の標本スライスを作成してスケッチさせ、読影レポートの所見をそこに書き込むというもの。「課題の目的は、読影医のレポートが正しいか、実際の解剖体で確認すること。その実習レポートは読影医を読者に設定し、適切な読影だったかどうか、読影医に役立つレポートを作成する指示している」(村上氏)。解剖の現場で解剖体とCT画像を的確に対比できる能力を養うツールとして、iPod touchが有効だと指摘した。

 「学生へのアンケートでも、半数の学生がiPod touchの利用は役立つと回答。CTを解剖学に組み入れることに対する目的達成度も、半数の学生が達成できたと回答している。学生の中には画面サイズがもう少し大きい方が、ディスカッションがやりやすいという意見があるため、9月からの今年度の実習ではiPadの利用も試してみようと考えている」と村上氏は述べた。

(増田 克善=日経メディカルオンライン/デジタルヘルスOnline委嘱ライター)

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