物流と医事会計をリンクしたシステム構築で職員のコスト意識を醸成

富士宮市立病院事務部長・広瀬辰造氏インタビュー

コード体系の連携、例外処理の整理がポイント

 システム化のための基本的な考え方は、物流、オーダ、医事のそれぞれのデータを物品ごとに1対1にすること。しかし、これは絶対に無理なことです。例えば、自動縫合器などは20数種類あり、物流では個別に管理されていますが、医事請求では自動縫合器加算としてどれも同一に請求されるため、使用したのがどの自動縫合器であるか把握できません。あるいは物流で「血管造影キット」という単位で購入(管理)されるものが、実施入力・医事請求ではカテーテル何本、ガイドワイヤー何本など使用した材料で情報は処理されます。従って、仕入れと請求の情報は1対1にはなりません。こうした、システムでは単品で管理できない例外処理を、いかにルール化して全体を把握できるようにするかが重要です。いわゆる、物流の「見える化」におけるシステムづくりが肝要なのです。

 システムが稼働した当初は、こうした食い違いにより、98%未満の診療材料・医薬品のみでも毎月、約3000品目の再チェックが必要でした。システム化によって突き合せのためのデータ抽出が大幅に楽になったとはいえ、現場での再チェック作業は逆に負担が大きくなる結果を招いてしまいました。そこで、例外処理を明確にしてルールを作るとともに、食い違いが起こる過去の原因情報を引き継ぎ管理できる突き合せ結果分析ツールを開発することによって、翌月以降の再チェック品目を減らすようにしました。

現場に毎月3000項目もの再チェックリストを提示しても、一つひとつ調べ直すのは不可能です。システム担当者とSEで悩んだ末、1回チェックしたら同じ例外は翌月にはチェックしなくてもいいようなツールをExcelベースで開発し、翌月の作業負担を減らせるようにしました。それを繰り返すことでマスタの精度が上がり、再チェックすべき品目は減ってきました。その結果、今年3月分の98%未満の再チェックリストでは、医事課調査分で医薬品263品目、診療材料では72品目まで減少することができました。

 また、そもそも製品コードを物流、オーダ、医事で統一することは非常に困難で、それぞれのシステムのマスタでのコード連携、単位変換連携は手作業を介して行っていますが、今後は物流システムを起点とした共通マスタ機能を検討していく必要があります。約1年半の運用を経て、どのような例外処理が必要か、あるいは仕入れと実施時期の差によるデータ不一致といった部分の処理をどう把握するかなど、運用でのさまざまなノウハウを蓄積できたので、ベンダーにはこれらのナレッジを今後の経営支援システムに活かしていってほしいと思います。

最後は、診療スタッフがコスト意識、経営意識を持つこと

 実施入力したことにより、在庫は減り、補充の指示は確実になされ、実施入力データを基に医事請求は確実に行われます。システム化によって使用された物品のデータ把握・分析が容易になり、ミスの原因がどこにあるか明確になったことにより、当然ながら実施入力をされなかったことはシステムでは何ら把握できるものではなく、仕入れと請求の食い違いが減少したわけではありません。

 半年に1回の会議で、手作業でデータを突き合わせて改善策を実施しながら、すでに数千万円のムダをなくす成果を出していました。今回の数千万円のシステム投資によって、仕入れと請求の違いの精度が向上し、仕入れに対する請求の割合が98%未満の物品についての原因を徹底追求できるようになったことが成果といえますが、物品の無駄がなくなったという直接的な成果は認められませんでした。定量的な投資対効果を考えれば、投資効率の低さは否定できないでしょう。

 ただ、例外処理などを明確にしてシステムを整えてきたことで、現場スタッフに請求漏れにかかわる原因を論理的に説明できるようになり、病院の全スタッフにコスト意識を再認識してもらえる良い機会となったことは事実です。実施入力漏れやオーダ漏れは、患者さんの治療を優先しているときに起こることが多く、診療スタッフにとって、そこを責められるのは矛盾を感じるところです。が、システムによって現場での問題をいち早く把握し、それを現場のスタッフが認識し、改善していこうとする意識が醸成されてきたことの意義は大きいと思います。結局は、システムの運用を支えるのは職員全体がコスト意識を共有することであり、病院全体が一丸となった取り組みが経営改善を促すのではないでしょうか。(談)

■富士宮市立病院
所在地:静岡県富士宮市錦町3-1
開設:1945年12月(当時・市立富士宮病院)
院長:木村泰三氏
診療科目:内科、循環器科、外科、小児科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、放射線科、麻酔科、精神神経科
病床数:350床
Webサイト:富士宮市立病院
導入電子カルテシステム:MegaOak HR(NEC)

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