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病院経営とIT〜医療現場改革にITを活かす〜

IT推進のためにはリーダーが必要となる

 神野氏の発言によって、討論はIT化にリーダーが必要かどうか、といった話になってくる。これまでのIT化の遅れの一端には、管理者に権限が与えられていなかったことがあるという開原氏の言葉によって、リーダーと権限についての議論が開始された。

開原氏 本当の意味でITが使われるようになるには、しっかりとしたリーダーが必要だと常々思ってきました。東海大学病院のシステムがうまくいっているのは田中先生がおられるからだし、恵寿総合病院も神野先生がおられます。

 システムをうまく運用するにはリーダーの資質も大切ですが、どれだけ大きな権限を持つかも重要です。情報システムは情報だけでなく、お金の問題や人の問題が絡んでくるため、部分的な権限だけでは動かせません。他の産業界に比べて、医療の世界でのIT導入がうまくいっていないのは、きちんとした権限を与えられた人がいないからだと考えています。

豊田建氏 IT導入に成功している民間企業などでは、CIO(Chief Information Officer)が社内のNo.2になってきているので、権限が必要であるということもわかります。ただ、その権限を持つ前に、トップが医療ITを何のために使うかということの明確な方針を持っている必要があります。全国の病院を見ていくと、成功した病院は必ず院長先生や理事長が明確なIT導入の指針を持っています。しかし、残念ながら部長や室長などのIT部門の責任者の方々は、病院全体で経営的に医療ITをどう使うかという視点をほとんど持っていません。開原先生の意見と違いはないかもしれませんが、ITの目的をしっかり議論しなければならないと思います。

開原氏 私が興味を持っているのは、東海大学で田中先生がなぜそのような権限を持っておられるか、ということです。東海大学がそのような立場の人を作ったのは素晴らしいことで、情報システムを任せられる人を見つければうまくいくという参考になると思います。ご自分のことで話しにくいかもしれませんが、田中先生がどんな経緯で権限を持つようになったかを教えていただけますか。

田中氏 ひと言で言うと、僕に能力があるからです(笑)。それから、元々の肝臓外科医にこだわらなかった、ということもあるでしょう。武田先生も循環器医からコンバートされてかなり悩まれた時期があったと思いますが、人生を享楽的に生きる覚悟があるかどうか、という話だと思いますね。何かにこだわり過ぎない、お金に汚くない、ということは重要です。

 開原先生がお話しているのは多分、病院にはCIOが必要で、CIOには経営にコミットするような予算権限だけではない+αの権限が必要だが、現状は医師がシステムを担当するしかないという話だと思います。問題は、そういった人材が日本では突然変異的にしか生まれてこないということです。経営が存在しない国であるし、産業界でようやく経営らしきものが現れたと言ってもよい状態だと思うので、当分は突然変異に頼らざるをえないのではないでしょうか。

開原氏 田中先生のような方がいることを東海大学が認めた点は偉いな、という気がします。私がいた国立大学病院では医療情報部を作りましたが、権限を与えることができませんでした。その結果、研究に走ったり、システムのお守り役になってしまいました。ですから、突然変異を期待すると同時に、やはりそういった人材を育てる努力もしなければならない、と考えています。

神野氏 私の場合は、ITの活用が権力闘争の1つであったのかもしれません。私も若くして院長になったので、権力闘争の中で旧勢力と戦うときに、何か旧勢力のできないことをやろうと思ったらITしか道がありませんでした。

 過去の成功体験を持った旧勢力、たとえば病床や病院を増やせば儲かると考える勢力がいる一方で、東海大病院は病床を減らして儲かっていますよね。成功体験を持っている高度経済成長期に病院を経営していた方々に対して、今のIT世代が出てきたことによって、ITを使える人と使えない人の間で権力闘争が起き、ITを経営に利用するグループが出てきたのだと考えています。これからは、医師やCIOの中でやる気のある人が出てくれば、大いに伸びる可能性があるということだと思いますよ。

 経営にITを使ったほうがいいということは当たり前ですが、もうひとつ、患者さんの視点でどれだけITがメリットを生むかも考えなければならないと思います。インターネットで患者さんが自分のカルテを見ることをよしとするならば、やはりデジタル化が必要になってくると思います。

 時間も大幅にオーバーしていたため、第一回の討論はここで終了となり、質疑応答の時間となった。会場からは、東海大病院や恵寿総合病院の話に非常に興味を持ったという意見とともに、民間病院がコストをどう捉えればよいのかや、標準化についての質問が出され、時間の制約はあったものの、各パネリストが丁寧に回答した。

 今回行えなかった議論や会場から出された質問などを基に、2007年4月には第2回シンポジウムが開かれる。

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