所沢肛門病院(埼玉県所沢市):ペンタブレット入力、セットオーダー、電子化パス運用による効率化を実現

単科専門病院だから享受できた電子カルテのメリット

●ペンタブレット端末の多用で診療科特有のニーズに対応

電子カルテの画面。液晶ペンタブレットの採用により、描画ツールで描いた絵も取り込める

 導入したシステムは、電子カルテシステムER、医療事務管理システム(以上ワイズマン)、PACS(パナソニックメディカルソリューションズ)、診察券発行機(ドットウェル ビー・エス・エム)など。電子カルテ・医療事務管理システム端末17台のうち、外来診療部門(4台)、内視鏡室(3台)、手術室(1台)にペンタブレット型のデスクトップPCを導入している。内視鏡室にもペンタブレット型端末を配置したのは、内視鏡所見の絵をその場で入力できるようにするためだ。
 
 ペンタブレットによる入力では、白紙状態のシェーマツールに直接描くのはもちろん、テンプレート化した肛門の図に患部の様子を描き込むこともできる。また、痔の種類(疾患名)、症状、処置名など頻繁に使う名称を登録しておき、ペンでドラッグ・アンド・ドロップできる。「運用当初は、紙と勝手が違って描きにくく感じましたが、慣れてくればテンプレートを活用して効率的で見やすい記述ができるようになります」(栗原氏)という。
 

ペンでの入力の様子。頻繁に使う名称を登録しておき、描画にドラッグ・アンド・ドロップで挿入できる

 同院では、電子カルテのログインに独特の方法を採用している。数人の医師が外来を担当しているが、医師は外来診察ブースひとつを担当するのではなく、4つのブースを移動しながら診察している。そのため、各ブースで医師がその都度システムにログインし、患者カルテを呼出す方法では、時間のロスになる。そこで、「診察医」という共通ログイン名を使用してあらかじめログインしておき、入力の際に医師名を明記して操作する。また、各診療端末にはカードリーダーを設置して、患者の磁気診察券でカルテを呼び出す方法をとっている。

 磁気診察券は、モダリティとの患者属性連携にも利用している。X線DRや内視鏡装置に属性情報を入力する手間をなくすために、各モダリティにもカードリーダーを設置した。電子カルテ(オーダリング機能)と属性情報を連携させるためにネームサーバーなどの導入が必要になるものの、磁気診察券とカードリーダーの運用でコスト削減が可能だという。
 
●単科専門病院ほど電子カルテのメリットを最大限活かせる
 

医事課の長島好美氏

 電子カルテを導入して最も業務が効率化した部門は、医療事務部門である。外来患者数は通常で150人程度、多い日は220〜230人にのぼるため、紙カルテを探し出して搬送する手間が大きな負担だった。また、紙カルテに指示、処方、検査などの伝票類を貼り付ける管理作業、内視鏡写真の整理作業などに、事務担当者は忙殺されていた。「あらゆる伝票をカルテに切ったり貼ったりする手作業がなくなり、医療事務に専念できるようなりました。また、受付時の患者登録作業も効率的になり、事務処理で患者さんを待たせる時間が大幅に短縮できました」(医事課 長島好美氏)。医療事務部門の人員削減も実現できたという。

 医師のカルテ記載では、シェーマ作成と同様、テンプレートを活用することで、効率的な入力が可能になった。栗原氏は「例えば痔核についていえば、出血、痛み、脱出など、症状はほぼ限定されるので、あらかじめテンプレートに登録しておくことにより素早い入力ができるようになりました。オーダーに関しても、セットオーダーが組みやすい疾患ということもあり、電子カルテのオーダリング機能のメリットを存分に活かすことができます。当院のように疾患が限られ、治療もマニュアル化しやすい医療施設は、電子カルテの運用メリットは非常に大きい」と強調する。

看護師長の平野容子氏

 手術入院のクリニカルパスを電子化したことで、運用も楽になった。紙パスの場合、医師の指示を受けて病棟看護師が毎回手書きで作成していた。電子カルテ導入後は、痔核手術パスや大腸ポリープ切除術パスなど数種類のパスをあらかじめ用意して運用できるようになり、作成作業の手間がなくなった。

 看護師長の平野容子氏は、パスの作成作業に加えて指示伝票がなくなったことで、煩雑さが大幅に減ったと指摘する。「手術処置伝票や大腸検査処置伝票は看護カルテに一時的に保管していますが、指示はすべてカルテ画面上で確認できます。実施漏れを防ぐための伝票チェックなど、煩雑な作業がなくなりました。患者記録は電子カルテの看護記録欄に入力するようになり、紙の看護カルテは検温板ぐらい。手書き作業が大幅に減りました」。

 栗原氏は、大腸ポリープ切除後のフォローアップに電子カルテデータを利用できるようになったことも、メリットの1つだと指摘する。「大腸ポリープを切除した患者さんは、再度ポリープができる傾向があります。また切除した部位のフォローとポリープの見落としをなくすため、約1年後の再検査を勧めています。それを促すための郵便の発送に、電子カルテデータを利用しています」(栗原氏)。

手術室でも電子カルテを利用できる

 従来は郵便発送のために、市販ソフトを使ってポリープ切除患者のデータベースを作成していた。すなわち、ポリープを切除した患者について、住所、氏名、次回フォローの予定日などの情報を手作業で登録。フォローする患者を毎月抽出して、ラベルを印刷し発送していたのである。電子カルテを導入することにより、電子カルテのデータから該当する患者の検索・抽出が可能であるだけでなく、氏名、住所など事務サイドで入力したデータを共有することができ、業務が著しく効率化した。

 電子カルテの最大のメリットは、診療情報の一元化による効用である。現在、内視鏡画像やX線画像、他院からのMRIなどを電子カルテ上に一元化しているが、栗原氏は各患者の患部の写真なども電子カルテに取り込んで利用することを考えている。そうすれば、患者の臨床経過をより視覚的にとらえることができるからだ。

 一方栗原氏は、課題として、ペンタブレットの描画精度がさらに向上することを指摘。「操作に慣れてきたとはいえ、まだまだ手書きの方が短時間で正確に描けます。ペンタブレットにも、手書きに近い操作感を期待したいですね」と述べた。

(増田 克善=医療ITライター)


 

■病院概要
名称:所沢肛門病院
所在地:埼玉県所沢市小手指町1-3-3
開業:1981年
診療科目:胃腸科、消化器科、肛門科、外科
病床数:44床
Webサイト:http://www.tokomon.jp/
主要導入システムなど:ワイズマン「電子カルテシステムER」「医療事務管理システム」、スペリオルアドバンテック:コンサルティング

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