京都大学医学部附属病院:デスクトップクラウド環境で診療情報と臨床研究用データを一元化

病院情報システムとFileMakerによる臨床研究データベースの連携運用

経営管理課医療情報管理掛主任の藤田健一郎氏

 現在、FileMaker Server上にあるデータベース数は、医療情報部の管理下にあるものだけで111もある。このほかにHIS上の各ユーザーに個人フォルダ用として提供している2GBの領域と、各診療科のデータ保管として持ち込みを許可したNASが多数あり、膨大な臨床研究用データが保管されている。「これまで、臨床研究用データが各診療科に散在していたわけです。それらがサーバールームに集約されたことだけでも、データ保護の点などで大きなメリットがあります」と竹村氏は話す。

 デスクトップクラウド化により、京大病院では多様な端末を利用できるようになった。、実際、診療現場からiPadを利用したいというニーズが上がっている。また、臨床研究用プラットフォームとしてFileMakerの運用が浸透している同病院にとっては、FileMaker Goを利用して容易にFileMakerのデータベースにアクセスできる環境がある。診療現場からは、ベッドサイドや手術室など場所を選ばずに臨床研究用データを入力したい、研究用の問診を取る際にiPadを外来患者に渡して入力してもらいたい、など使い勝手の良さを活かした利用例が提示されている。

●WebサービスとFileMaker GoによりiPad利用のニーズに応える

 「iPadを活用する際の利点は、目的に特化した小さなアプリを作成すれば利用できること。ベッドコントロールセンターの医師からは、病棟フロアに行ったときに空きベッド一覧や稼働中ベッドの診療科一覧を閲覧できるアプリに対する要望があります。FileMakerは、臨床研究業務を外部から管理できるツールとして利用可能であり、実際の患者さんからデータ取得するためにベッドサイドでiPadを活用するというトレンドはあります。実際、先日もベッドサイドでiPadを利用して研究データを一元的に取得したいという相談がありました」(竹村氏)。

 FileMaker Goがリリースされる前、竹村氏は、iPadをHIS内データの二次利用のために構築したシステムによるWebサービスを通じて利用しようと考えたという。診療情報をWebサービスの形で活用することを視野に入れ、KING5構築時にWebサービス用ミドルウエアのIBM WebSphereを導入している。

 竹村氏は「電子カルテの情報をWebサービスとして提供しベッドサイドでiPadに表示させる機能はもちろん、Webサービスを外部システムとマッシュアップして新たなサービスを提供することも可能です。例えば、HISの患者属性情報をGoogle Mapとマッシュアップして地図上にマッピングし、連携先の医療施設を探し出すといった活用法も考えています」と指摘する。

 こうした、FileMakerをメインにした臨床研究用データとHIS連携や、HISデータの二次利用などでは、新たな運用上の課題も明らかになってきた。例えば、Webサービスでデータを提供するようになると、HIS上の何のデータを誰がどのように利用するのか管理する必要がある。また、HIS上の情報は基本的に誰もがアクセスできることを前提としているが、研究用データは機密性が高いためアクセスを制御する必要がある。

 「従来のように研究用データがFileMaker内に閉じていれば問題ありませんが、研究用のデータソースをWebサービスとして利用できる環境になった時点で、新たな利用ルールや管理方法を作っていかなければなりません。また、診療データと研究データが一元的に扱えるようになったことで、研究用データも医療情報部で管理するのかどうかという議論も必要です」(竹村氏)。大学病院にとって、診療業務と臨床研究は不可分な関係にある。電子化された情報を多様に活用できる環境では、ガバナンスと研究の自由性の両立という新たな課題を解決していく必要があるようだ。

(増田 克善=デジタルヘルスOnline/日経メディカルオンライン委嘱ライター)
 


 

■病院概要
名称:京都大学医学部附属病院
所在地:京都市左京区聖護院川原町54
設立:1899年
診療科:内科、循環器科、神経内科、外科、産科、婦人科、小児科、皮膚科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、脳神経外科、心臓血管外科、呼吸器外科など30科
病床数:1124床
患者数:外来平均2635人/日、入院平均1002人/日(2009年)
職員数:2617人(医師707人、看護師1013人他)(2009年)
Webサイト:http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/
導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Server」「FileMaker Pro」「FileMaker Go」、IBM「Clinical Information System(CIS)」

ページの先頭へ戻る

前のページへ

次のページへ

関連記事

Information PR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. ガイドラインにはない認知症の薬物療法のコツ プライマリケア医のための認知症診療講座 FBシェア数:77
  2. 膿のニオイをかぐのはNG? 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:2
  3. インフルエンザの早い流行で浮かぶ5つの懸念 リポート◎AH3先行、低年齢でAH1pdmも、外来での重症化… FBシェア数:244
  4. 医療事故調制度の「目的外使用」が続々明らかに ニュース追跡◎制度開始から1年、現場の理解はいまだ不十分 FBシェア数:35
  5. 救クリが研修先として適切か検証してみた 木川英の「救急クリニック24時」 FBシェア数:1
  6. 45歳男性。胸痛、冷汗 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  7. ニボルマブ薬価50%下げは厚労省判断だった 医療行政の舞台裏◎実は「官邸に押し切られた」のではなく… FBシェア数:1
  8. 医師国家試験を解答するAIの正体教えます トレンド◎人工知能が医療現場にやってくる FBシェア数:221
  9. 腸管アンモニア産生菌に対する肝性脳症治療薬 最新DIピックアップ FBシェア数:8
  10. 「肩や上腕のひどい疼痛」で見逃せない疾患は? 山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」 FBシェア数:1