京都大学医学部附属病院:デスクトップクラウド環境で診療情報と臨床研究用データを一元化

病院情報システムとFileMakerによる臨床研究データベースの連携運用

 京都大学医学部附属病院(以下、京大病院)は、新総合医療情報システムを2011年9月に本格稼働した。電子カルテをはじめ、各種医療システムをデスクトップクラウド環境で運用。各診療科で臨床研究用データベースとして運用してきたFileMakerも、約2100台の電子カルテ端末の仮想デスクトップ上で稼動させ、電子カルテシステムとの連携によりシームレスなデータ運用を実現した。


 

 1899年開設と古い歴史を持つ京大病院は、30診療科・部と1124床を有し、1日平均入院患者1002人、1日平均外来患者2635人を誇る基幹病院だ。医師717人、看護師1013人をはじめ、約2600人の職員を抱える(2009年実績)。診療面では、高度な先進医療を推進しており、患者中心の開かれた病院として質の高い医療を提供している。研究面でも、高度な臨床研究を推進すると同時に新たな研究の取り組みを支え、診療行為とバランスを取った運営を行っている。
 

落ち着いた色合いで統一されている京都大学医学部附属病院の外観

 医療現場のIT化の面でも、早い段階から積極的に推進してきている。第3次の京大病院総合病院情報システム(KING、Kyoto university hospital INformation Galaxy)でオーダリング、2005年のKING4でIBMの総合医療情報システム(CIS)を採用し、電子カルテ機能を整備した。

 そして、2011年9月に本格稼働したKING5では、CISのバージョンアップ実施と同時にデスクトップクラウドを採用。電子カルテシステムなど各種医療システムを、サーバーベースコンピューティング(以下、SBC)に移行した。また、診療用の病院情報システム(HIS)と臨床研究用のシステムの融合を図るために、約2100台のHIS端末でFileMakerが利用できる環境を構築し、HISと連携した運用を実現している。

●診療情報と研究用データがシームレスに利用できる環境を目指す

 2005年に導入したKING4では、基幹システムとしてCISを採用し、HIS端末を約1200台導入、電子カルテ機能も実装した。電子カルテ機能をリリースされると、眼科など一部の診療科を除いて自然に運用が始まり、スムーズに電子カルテ化へ移行したという。「当病院は東西550メートル、南北350メートルの敷地に病棟が点在していて、患者も医療スタッフも移動するだけで大変でした。それで紙カルテの搬送が大きな負担になっていました」。医療情報学講座講師で医療情報部の竹村匡正氏は、思ったよりスムーズに電子カルテ運用が浸透した背景をこう説明する。
 

医療情報部の竹村匡正氏

 電子カルテ運用が浸透してくると、診療情報がHIS上に集約された。ほとんどの診療業務、研究業務、さらにメールやコラボレーションツールの利用などを、HISを中心にして1台の端末で運用したいというニーズが高まった。「HIS上の診療情報とは別に、ドクターは個人や診療科単位で臨床研究データを蓄積・管理していました。しかし、個人情報を含む診療データを研究室に置くことで、セキュリティやシステム運用に関して問題や課題が生じました」と竹村氏は説明する。

 一方で、医療情報部門でも、研究室でデータを二次利用するためのデータ抽出依頼が増大し、その対応にも苦慮していたという。「こうした課題や要求に対応するため、診療用データと研究用データがシームレスに利用できる環境を構築しなければならないという思いを強く感じました」(竹村氏)。

 そこでKING5構築時には、十分なHIS端末の確保、電子カルテ以外の情報も共有できる環境、診療データと研究データのシームレスな利用、外部との安全な接続によるサービスの展開などを基本方針とした。技術面での大きな特徴は、デスクトップクラウド環境を構築したことだ。電子カルテはSBC環境でセキュアに運用しているのに加えて、研究データ用に利用しているFileMakerをはじめ、さまざまなアプリケーションを1台の端末ですべて利用できる環境を実現した。

●デスクトップクラウドによりセキュリティ担保と利便性向上

 SBC用として、99台のブレードサーバーを仮想環境で運用している(端末は2100台)。電子カルテはSBC上で動作しており、ローカルに診療データがダウンロードされることはない。こうしてセキュリティを担保しているので、病院施設外の研究棟からも電子カルテを参照できる。また、インターネット閲覧用にSBCサーバーを立てたことで、電子カルテとは別になっている仮想デスクトップ領域から、自由にWebサイト閲覧が可能になった。「HIS端末でのWebサイト閲覧や、2009年から利用しているクラウド環境のG-Mailの利用ができるようになり、従来のインターネット接続用の端末インフラが不要になりました」(竹村氏)。

 「CISは元々患者データの検索・呼び出しが速いという特性がありましたが、SBC環境でもレスポンスを落とすことなく、スピーディな操作性を実現できました。SBC上の電子カルテ以外にも、掲示板などのコミュニケーションツールや頻繁に使用する部門アプリケーションなどに、すべてポータルを起点としてシングルサインオンでアクセスできます。また、HIS上に個人用フォルダ(2GBまで)・共有フォルダ領域を設けて、研究用データの格納も可能になりました」(竹村氏)。

 医用画像システムとの連携でも、電子カルテの体感スピードを重視した。ビューアーは、PC上のローカルアプリケーションで参照する仕組みにしている。画像参照はSBC上の電子カルテの患者IDをトリガーとして、放射線系はCentricity Enterprise Web(GEヘルスケア)、内視鏡画像や非放射線系はClaio(PSC)、スキャンデータ系はC-Scan(同)の各サーバーとクライアント端末が直接通信して、画像ポータル上で連携している。
 

医用画像システムとの連携の概要

 

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