山陰労災病院(鳥取県米子市):帳票や伝票の必要性にもこだわり、「紙」と「電子」の融合システムを構築

FileMakerによるサブシステムと電子カルテの組み合わせで実現

●基幹システムとのデータ連携を実現するフロントエンドファイル

 山陰労災病院が採用した医療情報システムは、両備システムズのパッケージで、電子カルテ、オーダリング、看護支援、医事会計の各システムで構成されている。機能面では、電子カルテとオーダリング部分が分離しているのが特徴。電子カルテ部分は、経過記録をデータストックする機能を担うというシンプルな仕様で、FileMakerをサブシステムとして活用できる。

 その連携をサポートする仕組みとして、利用者がログインして患者を特定したタイミングで、患者情報(基本的な属性情報)・使用者情報・仕様端末情報などをデスクトップ上にCSVファイルで発行する機能を用意している。FileMakerは、そのCSVデータを読み込んでレコード作成できるようになっている。

 しかし、この方法では患者の基本属性情報しか得られず、診療プロセスで使用する帳票作成や電子カルテの機能補完する際のデータモジュールには不十分。そこで、FileMaker Proのバージョン9以降で利用できるようになった、外部SQLデータソース(ESS:External SQL Data Source)に双方向接続できる機能を使い、ベンダーが用意した電子カルテサーバー上のESS用テーブルから、病名・手術情報・アレルギー感染情報・検査データ・予約受付情報などを直接FileMakerサーバーに取り込む仕組みを取り入れた。このESSは、現在29テーブル、450フィールドがあり、さらに増え続けている。
 

電子カルテから起動した医師用のFileMakerの患者情報管理画面。電子カルテから起動した医師用のFileMakerの患者情報管理画面。患者基本情報などは電子カルテサーバーから取得し、さまざまな書類やサマリー、各種記録のドキュメントが管理されている

 
 電子カルテサーバーから患者情報とマスターデータを取得してくるタイミングは、FileMakerが起動してCSVファイルを読み込んだときにFileMakerサーバーを介して取得リクエストされる。そのトリガーの役目を果たすのが、「フロントエンドファイル」と呼んでいるもの。「どのタイミングでHISからデータを取得してくるか悩んでいたのですが、一人では解決できず、助言を求めて名古屋大学医学部附属病院の吉田茂先生を訪問しました」(太田原氏)。

 吉田氏は、各医局の資産として運用してきたFileMakerによるデータベースと基幹システムをデータ連携させた経験を持つ。フロントエンドファイルは、名大病院のFileMakerポータル「名大の森」に相当する。具体的には、電子カルテサーバーから取得したデータを、FileMakerで作成した各部門や業務で使用する帳票に取り込み、診療時のデータ入力、あるいは手書きして完成させた書類をPDF出力して電子カルテサーバーに保存するという行程をとる。

FileMakerとHIS(電子カルテ・オーダリング・看護支援システム)とのデータ、ファイルの流れ。フロントエンドファイルが起動したときに各種患者情報とマスター情報をHISから取得してくる。FileMakerで処理された業務書類はPDF化してHISに保管される

 
 FileMakerサーバー上のマスター情報は、利用する際に取得してくるため、電子カルテサーバー上のマスター管理がなされていれば常に最新情報を得られる。そのため、FileMakerのマスター管理作業は必要ない。

 「例えば職員マスターでは、医事課で所属変更を行っていれば、常に最新データが反映されます。また、フロントエンドファイルを使う際にスクリプトでログ管理して公開しているので、誰が・いつ・どの端末で・どの患者の情報にアクセスしているか、すべて可視化されます。職員のデータアクセスは常に監視されているため、不正や誤操作への抑止力にもなるというメリットもあります」(太田原氏)。

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