金井病院(京都市):電子カルテ導入と患者IDの統一でグループでの情報共有を実現

急性期医療・在宅医療・予防医療をシステムで支援

 京都市伏見区の医療法人社団 淀さんせん会 金井病院は、ケアミックス型で健診部門を持つ本院と在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、デイサービスセンターなど、グループ全体で地域の急性期医療・在宅医療・予防医療を支えている。同院は2011年7月に電子カルテを中心とした病院情報システムを本稼動し、院内業務を効率化すると同時に情報共有環境を構築した。グループ全体で患者IDを統一することで、急性期、在宅、健診の各部門・グループ施設で患者情報へのアクセスと共有を可能にし、効率のよく質の高いサービス提供を可能にした。

 


 

 金井病院は1984年の開院以来、伏見・淀地区住民にとっての「町の病院」として、地域医療を支えている。同地域には開業医が少ないという事情もあり、急性期医療を担うと同時にかかりつけ医としての機能も果たしているという。一般114床、療養44床という病床数が表すように、ケアミックス型病院として地域のニーズに応えている。

金井病院理事長の金井伸行氏

 同病院理事長の金井伸行氏は、「経営的には急性期・一般病床にシフトすべきでしょうが、高齢化が進行する中で地域の要請に応えていくためには、バランスを重視した病院運営が必要です。2007年に理事長に就任してから、急性期医療、在宅医療、予防医療を3本柱として強化しています」と病院の特徴や運営方針について述べる。

 その在宅医療を担うのが、在宅療養支援診療所として訪問診療を主業務とする金井クリニック(金井理事長が院長を務める)をはじめ、訪問看護ステーション、デイサービスセンターなどのグループ関連施設だ。また、予防医療については「金井病院ヘルスプロモーションセンター」という健診部門を持ち、人間ドックや企業・団体健康診断に注力している。

●電子カルテ導入に動き出すもプロジェクトは途中で凍結

 金井病院が電子カルテシステム導入の検討を始めたのは、金井氏が理事長に就任した1年後の2008年夏。当時はカルテの電子化よりも、オーダリングシステムの導入が検討されていた。同病院は100床規模ながら23科という非常に多くの診療科を標榜し、10診体制で外来業務をこなしていた。

 複数科受診をする高齢患者も多く、紙によるオーダーや紙カルテ移動など煩雑な業務により、診察終了から会計まで1時間近くかかっていたという事情があった。そのため、電子カルテ化を見据えつつも、まずオーダーのシステム化が望まれた。

 ところが、電子カルテ委員会を発足してシステムの情報収集、7社の提案・デモを受けるなど約1年間かけて検討したものの、導入はいったん凍結される。「当時は医師以外、電子カルテやオーダリングシステムがどんなものか知る職員はほとんどなく、何を議論していいのかわからない状況。システム化に向けた院内の気運が、なかなか盛り上がりませんでした。また、私の電子カルテのイメージに合うパッケージがなかったこと、当時提案されたシステムが予算に合わなかったこともあります」(金井氏)と、導入凍結の理由を説明する。
 

情報センター課長の森口健吾氏

 金井氏がシステムに求めた要件は、病院、クリニック、訪問看護ステーションなど、複数の施設間で情報共有やシステム利用を可能にするものだった。病院とクリニックで電子カルテの必要な情報を相互参照できること、クリニックから病院の検査予約ができる機能を実現することが求められた。「在宅に戻ってクリニックの訪問診療を受けている患者さんが救急で病院を受診されるとき、あるいはクリニックの患者さんが病院の検査を受けるときなど、グループ内で医療連携していくためには日頃の診療記録が参照できる、病院の検査予約システムがクリニックから利用できる、といった仕組みが必要でした」(金井氏)。

 2009年にはPACSを先行導入して画像のデジタル化をすすめていたものの、そうした理由から電子カルテシステムの選定はひとまず先延ばしになった。しかし、医事会計システムがそのままではレセプトオンライン化に対応できないこと、2011年3月にリースアップすることから、そのタイミングで電子カルテを導入しようと、2010年に再びプロジェクトは走り出す。

●院内・複数施設間の情報共有、連携機能を要件にシステム選定

 ワイズマンの電子カルテを中心としたシステムが正式に採用されたのは、2010年末。2カ月の集中的な検討を経て、ほぼ決まりかけていた他のベンダー製品を覆しての採用決定だった。選定に至った最大の理由は、施設を超えたシステム利用、情報共有に関する提案だったという。金井氏は次のように話す。

オーダリング機能を含む電子カルテシステムERをはじめ、病棟看護支援システムER、臨床検査システムER、医療事務管理システムなど導入した

 「従来、病院の医事会計のための患者ID、先行導入していたクリニックの電子カルテの患者IDや健診システムの受診者IDと、すべて個別に運用されていました。施設間で情報共有したいという強い要望を実現するためには、まず各施設で利用していたこれらのIDを統合することが必要。その課題に対して、積極的なシステム化提案をしたのがワイズマンでした。加えて、複数の検査を同一日に予約する際の機能について当初は実装されていませんでしたが、一覧画面で予約できるよう機能追加するという提案も評価しました」。

 ニーズに対して柔軟で比較的容易なカスタマイズで対応する、しかも比較的低いコストで導入できるという点を高く評価したわけだ。導入検討時のデモで、ワイズマン製電子カルテの画面構成のわかりやすさ、操作性の良さなどに対して、多くの職員の印象が良かったことも、選定に大きく影響したという。

 導入されたシステムは、オーダリング機能を含む電子カルテシステムERをはじめ、病棟看護支援システムER、臨床検査システムER、医療事務管理システム、リハビリテーション支援システム(タック製)など。すでに運用されていたPACS、RIS、読影リポートなど放射線部門システム、健診システムなどとの連携が図られた。また、金井クリニックのシステムも、ワイズマンの電子カルテ、医療事務管理システムにリプレースされた。

 システム導入は、2011年3月に旧医事会計システムの契約終了が迫っていたため、そのリプレースを先行して3段階で実施した。まず、3月初めに医療事務管理システム稼動と受付システムの連携、投薬オーダー機能を稼働。4月には、金井クリニックの電子カルテと医療事務管理システムを稼働。そして7月半ばには、電子カルテ、全オーダー機能、病棟看護支援、臨床検査、リハビリ支援など、全システムを本稼動させた。

 システム化に伴う各部門での運用ルール決めから、約6カ月半という短期間で、全システムの本稼動を実現させた。理事長や電子カルテ委員会長の副院長を筆頭に各部門責任者が、一丸となってプロジェクトに取り組んだ成果である。特に病棟看護支援を中心とした記録部分の稼動はスケジュール通りに運ばないのではという懸念があったが、運用開始日が迫るにつれ、全職員が必死に操作を習得したという。

 「受付のしかたや患者案内、紙による各種指示がシステム化によって大きく変わることを職員がイメージできない中で、運用ルールを決めるのに苦労しました。しかし、各部門のヒアリングから部門スタッフ間のコミュニケーション活性化まで、ワイズマンの常駐SEが非常に活躍しました」と、金井氏はベンダーを高く評価する。

 導入・運用開始後のサポートについて、情報センター課長の森口健吾氏は、「最適な運用に向けて改善要求を出しながら対応してもらっています。システム選定時に期待した小回りの利くサポートを発揮してくれて、迅速で的確な対応をしてくれます」と好評価を述べる。

●患者ID統一で施設間の情報共有、複数の検査予約の煩雑さを解消

 システムの本格稼働からさほど経過していないが、外来・病棟、健診、在宅医療の各部門で1患者1IDを実現した「患者ID統一」が、大きな効果を生んでいるという。健診で再検査が必要になり、外来受診した新患の場合なども、いちいち患者IDを振り出すことなく、健診データを活かすことができる。職員の事務作業の軽減はもちろん、患者の診療や健康保持・増進など、予防医療にも役立てられるようになった。

金井病院のシステム概略図

 

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