国立成育医療研究センター:端末電源管理で最大4割近い消費電力を削減

電力消費抑制と環境確保条例への対策、インフラ運用最適化にも期待

 実証実験に先立ち山野辺氏は、実験開始前約1カ月間の病院情報システムのログを分析した。ナースステーションのどのPC端末を実験対象機とするか、またどのような電源管理ポリシーを設定するかを決定するためだ。病棟看護師の勤務体制は、日勤(午前7時〜午後7時)、準夜勤(午後7時〜深夜1時)、夜勤(深夜1時〜午前7時)の三交代で、夜勤は3人の看護師が詰めている。そこで、それぞれの勤務体制に応じて、3種類の省電力ポリシーを適用した。

3種類の省電力ポリシーの内容

 
 「当初、スリープ状態からの復帰に時間がかかって業務に支障を来すのではないかという懸念がありました。そこで3人体制の夜勤は3台を通常稼動にし、残りをすべてシャットダウンして、準夜勤だけスタンバイ状態を設定しようと考えました。ところがスリープからの起動でも業務上もシステム上も問題がなかったため、日勤においても台数を限定してポリシー適用を試みてデータを収集しました」(山野辺氏)と、3種類のポリシー設定に至った理由を説明する。

 消費電力の測定結果は、省電力ポリシーを設定しないPC端末の1日当たりの消費電力量が900Whだったのに対し、準夜勤/夜勤時間に省電力ポリシーを適用した2台のPC端末の1日当たりの消費電力量は700Wh、680Wh。約22〜24%の削減効果があることが分かった。特に日勤〜夜勤まで終日にわたり省電力ポリシーを適用したPC端末では、1日の消費電力量は560Whで、削減効果は約38%。CO2排出量も、約190g削減されることがわかった。また、利用したPC電源管理ツールは、PC端末を操作していないアイドル状態を検知できる機能を持つ。この機能を利用して、アイドル時間を大幅に短縮できた。

実証実験の結果

 
 「病院情報システムのログで誰が何時から何時までログインしていたということは把握していますが、アイドル状態にある時間はわかっていませんでした。ツールによってアイドル時間を検出できたため、これをスタンバイモードにすることで、使い勝手を損なわずに、予想を上回る節電効果を得られることがわかりました」(山野辺氏)。

 病棟のPC端末は、24時間フル稼動が基本。だが、実証実験の結果を踏まえて山野辺氏は、「利用状況の可視化で得た結果をみると、夜間にシャットダウンする端末があっても病棟業務に差し支えないのでは」という考えを持つに至った。同氏は、「インテル vProテクノロジーの機能を生かせば、端末の場所や利用状況に合わせて、シャットダウンを含む柔軟な省電力ポリシーを適用して、利便性やシステムのサービス品質を落とすことなくさらなる省エネルギー化が推進できるのでは」と考えている。

●ファシリティマネジメントの視点から統合的な設備管理目指す

実証実験実施時のナースステーション

 今回の実証実験は、電子カルテ端末の省電力化に限定しているが、山野辺氏は、医療情報システムだけでなく、医療機器や空調などの病院設備機器を含め、ファシリティマネジメントの視点から、統合的な設備管理とエネルギーコスト管理を実施する将来構想を持つ。

 医療施設では、医療機器のメンテナンス履歴の管理や、設備や消耗品の在庫管理、電源・各種ユーティリティ管理などが適切に実施できていないことが多い。例えば、病院情報システムは情報管理部、検査機器は診療科単位、空調や電源は財務経理部などとばらばらに管理していたり、管理情報が更新されないままになっていたりするケースも多いと考えられる。その結果として、管理・購買・メンテナンスなどに要するコストや人件費の増大、機器の品質や業務環境の安全性確保ができない、環境対策の遅れや手間・コストの増加、といったリスクを抱えることになる。

 成育医療研究センターでも、部門ごとにExcelなどで台帳を作成、管理しているが、適切に更新されていないことが多い。医療情報システムも、電子カルテベンダーによるHIS関連機器のみの資産管理でとまっている。

「通常、診察室の増設や移設を行うと、端末の移動やネットワーク工事も実施します。ただ、こうした変更に伴う管理情報の更新が追いついていないのが実情です。エネルギーコストについても、ビル管理を委託しているエネルギーセンターが情報を持っていましたが、情報システム部門は情報システム関連のデータを持っていませんでした」(山野辺氏)と施設情報管理の実態を指摘する。

 実は成育医療研究センターでは、院内の各種設備についての管理情報をロケーションとひも付けて一元管理するファシリティマネジメント支援システム「ObjectSCOPE」(クオリクス製)というツールを導入している。ObjectSCOPEは、機器・備品台帳、作業報告書、資産台帳など、Excelなどで個別管理されている情報を読み込んでデータベース化し、施設のCAD図面データとリンクできる。これにより、各種台帳と図面で管理情報、ロケーション情報を統合管理できる。2002年の病院開設時に導入されていたが、担当者の異動などもあってあまり利用されていなかったという。

 「今回の実証実験の仕組みも、ObjectSCOPEと連携させることによって、時間帯によって利用状況が異なるナースステーションの電子カルテ端末、診療科によって稼働状況が異なる外来診療端末を、配置状況とひも付けて電源管理することが可能になります」(山野辺氏)。

 山野辺氏は、施設・設備情報システムを、基幹業務を担う病院情報システム、会計・物流系やコミュニケーション系の情報システムである基盤情報システムに次ぐ、病院における第3の情報システムと位置付けている。ObjectSCOPEのようなファシリティマネジメント支援システムは、施設・設備管理、情報システム管理、会計管理など縦割りで管理している経営資源に関して、適切な見える化を実現できる可能性がある。山野辺氏は「IT化された管理情報を融合していく必要があります。設備インフラ情報を情報システムに取り込むことによって、環境対策の面からも一層の効果が期待できるでしょう」と語った。

(増田 克善=日経メディカルオンライン/デジタルヘルスOnline委嘱ライター)


■病院概要
名称:国立成育医療研究センター
所在地:東京都世田谷区大蔵2-10-1
診療科:内科、精神科、神経科、呼吸器科、循環器科、アレルギー科、小児科、産婦人科など23科
病床数:490床
外来定数:900人/日
開設:2002年3月
Webサイト:http://www.ncchd.go.jp/

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