健伸幼稚園(千葉県船橋市):ITを活用して園児の生活状況を記録

健全な生活への“気付き”を生む実証実験を実施

体重計(エー・アンド・デイ製)と個人認証用カードリーダー

 実証実験では、登園時に体重測定を行い、園児の服に歩数計を取り付けて在園中の歩数を測定した。データ入力時には、非接触型ICカードの一種であるNFC(Near Field Communication)カードで園児の個人認証を行った上で、体重と歩数のデータをKids Life Logプログラムに送信した。

 体重計(エー・アンド・デイ製)と歩数計(オムロン製)はいずれもコンティニュア・ヘルス・アライアンス(代表企業:インテル)が提唱するコンティニュア規格に対応しており、体重計データをBluetooth通信で、歩数計のデータはクレードルを(通信アダプター)介してサーバーに転送する。
 

コンティニュア対応アクセスポイント「eHealthゲートウェイサーバ AP3201」とシステム概略図

 コンティニュア対応の体重計や歩数計を利用したのは、データ入力を自動化することで、教員と幼児の負担が減り、記録者のモチベーションも高まると考えたからだ。しかし、第1弾の実験では、教員にとって園児6人のデータ転送だけでもかなりの負担となった。毎日、登園時にPCを立ち上げ、カードリーダーで個人認証をした上で、体重データを取り込み、降園時に再び同様の作業をして歩数データを取り込む必要があったからだ。

 そこで対象園児を拡大する2次実験では、負担を軽減するため、アライヴ(東京都港区)のコンティニュア対応アクセスポイント「eHealthゲートウェイサーバ AP3201」を採用することにした。このアクセスポイントをインターネットルータなどに接続しておくと、パソコンを介することなく、コンティニュア対応の健康機器のデータをデータセンターのKids Life Logプログラムに自動的に送信できる。

●子供の食事・生活状況を「記録」すること喚起される気付き

 実証実験の第1弾は、短期間で対象園児も限定されたものだったが、幼稚園側、保護者側共に多くの“気付き”があったという。特に母親からは、記録を見ることによって、普段の料理の傾向や、よく買う食品と無意識に使用していない食品を知ることができ、食事や生活環境のあり方を考えるきっかけになったという感想があった。

 この結果について柴田氏は、「保護者は、自分の子供が正常か否か、現状のやり方でいいか、改善すべきかを気にする傾向が強い。したがってこうした反応は不思議ではありません。実際にはほとんどの子供に問題はありませんが、“不足”よりも心配なのは親の意識からくる“過多”の方です」と言う。例えば、糖分やリン、脂分などの過剰摂取は小児生活習慣病のリスク要因と指摘される。特に、スナック菓子を食べる際のサクサクした食感を出すためにリンが使用されるが、これは子供がキレやすくなる原因とも言われる。そうした「過多」に対するチェック機能が期待される。

 「子供の記録を見ると、何を食べさせたらいいか、どのくらい睡眠を取らせたらいいか、どんなことに気をつければいいかなど、幼稚園側にも保護者側にも様々な“気付き”が生まれます。ITツールの活用は、こうした“気付き”を発見するために、大きな意味があります」(柴田氏)。

 柴田氏は、今回の実証実験で、排泄に関する記録が抜けていたことに気づいたという。食事内容、食欲、睡眠などエネルギー補給の要素を「IN」、排泄、遊び、活動などエネルギー発散の要素を「OUT」と考えると、INとOUTのバランスを見ることが重要だという。柴田氏は、「こうした要素の関連が分かる仕組みがあれば、園児の健康状態を管理しやすいし、保護者に対する指導も容易になります。記録する目的や効果を理解してもらうツールにもなります」と指摘した。

 ビオスピクシスは、柴田氏が指摘した機能のほか、数値の目安や記録内容へのコメントが欲しいという保護者の要望に応えるために、今後、平均値の提示や、健康知識をヘルプ画面で表示する機能を追加していくという。また、「食事や生活状況などについて、母親同士でアドバイスや相談ができるように、SNSのような仕組みの導入を検討したい」(仙波氏)と述べる。

 現在同社は、研究テーマとして長期的に取り組むため、小児専門医療機関や研究機関、健康機器メーカー、食品会社などに対してコンソーシアムの結成を提案しており、同時に他の幼稚園などへの横展開を図っていく計画だ。

(増田 克喜=日経メディカルオンライン委嘱ライター)
 


 

子供の「自ら育つ力」を育む

柴田炤夫氏
学校法人 健伸学院 理事長
千葉県私学審議会委員
昭和女子大学講師 東京成徳大学講師


 
 

 「現代の子供たちが昔と比べて虚弱になった」「子供のもやし化が進んでいる」といったことが喧伝されています。しかし、その論調を肯定したいばかりに、一面的なデータだけを取り上げているように感じられてなりません。

 もし、このような状況が本当に見受けられるとしたら、子供の成長に対して親が何から何まで関わりすぎ、子供が本来持つ「自ら育つ力」をそいでしまっているからではないでしょうか。本来は、持って生まれた「育とうとする力」を、いかに子供自らが鋭くし、磨いていけるかが大切。そのきっかけを与えるのが、幼児教育だと考えます。健康状態についても、1日どれだけ遊んだか、疲れを自分で感じ取って、どう対応すべきかを自らの経験を通して学ぶ能力を獲得していくことが重要です。

 以前と比較して現在の子供の生活は、基本的に健全だと思っています。もし、健全でない状況があったとしても、親や園がすぐに直してしまうのではいけないと思います。健全・不健全の内容を示して、子供自身が直さなければならない点に気付き、改善していくような環境を与えること。これで「自ら育つ力」がはぐくまれるのだと考えます。

 今回の実証実験は、毎日の健康や食事、生活に関するデータを記録し続けることで、子供の機嫌や不調の傾向、食生活や生活リズムとの関連性など、いろいろな“気付き”を喚起できるという期待を持てるものでした。コンティニュア規格やKids Life LogなどITを活用したツールは、データ収集や分析に関して非常に優れています。本来は、生活の中で気付く力を養うべきですが、まずは今回の実証実験がきっかけになればと思っています。


 

■施設概要
名称:学校法人 健伸学院 健伸幼稚園
所在地:千葉県船橋市丸山5-12-7
開園:1974年
Webサイト:http://www.pluto.dti.ne.jp/kenshin/
導入システム:ビオスピクシス「幼稚園児向けKids Life Log」、コンティニュア・ヘルス・アライアンス対応機器、アライヴ「eHealthゲートウェイサーバ AP3201」

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