藤森病院(長野県松本市):電子カルテシステム導入で充実したチーム医療を実現

医療スタッフ間の情報共有と円滑なコミュニケーションを促進

電子カルテ導入で実施漏れや確認漏れが減った

 同時に西村氏は、仕様変更に伴うベンダー担当者の対応を高く評価した。「最適な業務プロセスはどうあるべきか、多くの病院で導入作業を経験してきたベンダー担当者の方がよく理解しています。われわれの要求を聞き入れながら、システム仕様を考え合わせて最適なオペレーション提案をしてくれたことが、非常にスムーズに導入できた要因の1つと思っています」(西村氏)。

●情報共有と円滑なコミュニケーションがチーム医療を充実

 2009年9月に本稼動してから、1年半弱が経過した。各部門にアンケートを取った結果、既にさまざまな運用効果が出てきていることがわかった。特に情報の共有化がもたらすチーム医療の充実や業務の円滑化は、非常に評価が高いという。「医療スタッフの情報共有と円滑なコミュニケーション環境が整ったことが、充実したチーム医療の実践につながっていると感じています。システムを通して、スタッフ全員が治療方針を理解するとともに、変化する患者さんの状況を把握でき、一人ひとりの患者さんに向き合う時間や頻度が増えました。そうした環境が、安全性や満足度の向上につながると考えています」(西牧氏)。

日差しが降り注ぐリハビリ室

 病棟部門では、「カーデックス機能で付箋を利用すると、インフォームドコンセントの内容や申し送り事項がすぐに分かります。勤務を休んだ後などでも、患者さんの経過把握がしやすくなりました。以前は処置などを実施した後、サインやホワイトボードに記入する必要がありました。しかし今は、端末画面上で入力と確認が簡単にできるため、実施漏れや確認漏れがなくなりました」(病棟師長)。

 リハビリ部門では、診療カルテや画像の参照がリハビリ室でできるようになって、ムダな動きがなくなり、以前より経過の把握が容易になった。「システム導入前はカルテやX線写真をわざわざ見に行かなければならず、誰かが持ち出していて、閲覧できないこともしばしばでした。今は、端末で情報を簡単に参照できるので、患者さんへのきめ細かい指導につながっていると思います」(理学療法士)。
 

保管庫の中の紙カルテは5年でなくなる予定。その後は部屋を他の用途に転用する

 また、以前は、医師からリハビリ状況の説明に呼び出されることが多かったが、導入後は、情報を共有しながら頻繁にコミュニケーションが取れるようになり、チーム医療の質が向上したという。

 病院全体としては、患者導線の最適化とシステム導入の効果によって、受診受付から診療終了までの時間が大幅に短縮できた。病院リニューアルの効果もあって、入院患者数、外来患者数とも2割以上増加したが、職員の負担増にはつながっていないという。診療業務や検査業務、事務業務が滞ることなく、効率的な業務遂行が可能になった。

●タイムリーな診療・経営資料により可視化が進展
 

西村氏が毎日制作する日報。入退院患者数など事細かに連絡事項が記載されている

 病院情報システム導入後、西村氏の1日は、前日の日報を作成して各部門に配布することから始まるようになった。システムから外来患者数や各種実績の集計データを抽出し、各診療科でどのような診療行為が、どれだけ行われたか集計して、その日のトピックを加えてレポートにまとめ、すべての部門に配布して職員全員が参照できるようにしている。

 「毎朝の短い時間でレポート作成ができるのは、電子カルテシステムや医事会計システムからデータを容易に抽出できるから。職員すべてが、自分たちの行った診療行為の量や内容を把握することは、大切なことだと考えています。病院全体の動きを理解できる上に、業務効率を他の診療科と比較することが可能になったので、自ら考えて効率を上げようとする意識が出てきています」と西村氏。経営月報も、翌月の初めには作成・提出できようになった。まだ経営判断支援ができるデータ分析までは至っていないものの、こうしたタイムリーなデータを基にして、経営状況の可視化が進んでいる。

 一方、西牧氏は、診療情報の電子化は過去の診療履歴を検証し、より効果的な治療方針を導き出すことにほかならないと指摘する。「医療の質的向上を実現するには、失敗の原因を検証して次に生かすことが大切です。過去の診療履歴と結果を検証し、治療方針に生かすPDCAサイクルを回すことが、質の向上につながります。それを効果的に実践するには、IT化が必須です」。西牧氏は、病院のIT化がさらなる医療の質向上につながることに、大きな期待を寄せている。
 
(増田 克善=日経メディカルオンライン委嘱ライター)


■病院概要
名称:医療法人 藤森医療財団 藤森病院
所在地:長野県松本市中央2-9-8
開業:1889(明治22)年
理事長:藤森芳史氏
診療科目: 外科、整形外科、内科、消化器科、透析センター
病床数: 60床
関連事業: 訪問介護ステーション、居宅介護支援センター、訪問看護ステーション、訪問リハビリステーション
Webサイト:http://www.fujimori-hosp.jp/
主要導入システム:ワイズマン「電子カルテシステムER」「病棟看護支援システムER」「リハビリ管理システム」「臨床検査システムER」「医療事務管理システム」

ページの先頭へ戻る

前のページへ

次のページへ

関連記事

Information PR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. カロリー制限と糖質制限、どちらが正しい? 岩岡秀明の「糖尿病診療のここが知りたい!」 FBシェア数:143
  2. 名古屋第二赤十字病院の職員2人が麻疹発症 パンデミックに挑む:トピックス FBシェア数:351
  3. 「医療機関で麻疹拡散」は何としても防ぎたい パンデミックに挑む:トピックス FBシェア数:188
  4. 腸穿孔だけじゃない……磁石の誤飲は要注意! 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:6
  5. その「眠れない」は本当に不眠症ですか? 三島和夫の「知って得する睡眠臨床」 FBシェア数:39
  6. 点数新設! 遠隔モニタリングの損得勘定 リポート◎18年度改定でSAS・COPD患者のフォローを評価 FBシェア数:26
  7. 「四国の真ん中」の病院に医師が続々集まる理由 記者リポート FBシェア数:250
  8. 外傷患者に破傷風対策を忘れていませんか? EM Allianceの「知っ得、納得! ER Tips」 FBシェア数:91
  9. オイグルコンとリスモダンの併用はなぜ危ない? 医師のための薬の時間 FBシェア数:73
  10. 癌遺伝子パネル検査のインパクト 特集◎癌ゲノム医療がやって来る《2》 FBシェア数:17
医師と医学研究者におすすめの英文校正