事例研究:道南地域医療連携ネットワーク「MedIka」

データ非蓄積型の連携サーバ採用でコスト抑える

●シンプルでコストを抑えたプラットフォームを実現

 道南地域医療連携ネットワーク「MedIka」のプラットフォームである「ID-LINK」は、2003年度の厚労省の地域医療情報連携推進事業の一環で実施された日鋼記念病院(北海道室蘭市)の関連施設を含む9施設での医療連携で開発されたものがベースになっている。そこでの利用者の声と他の地域医療連携システムの分析を反映して進化させた仕組みがMedIkaに採用された。そのインフラの大きな特徴は、データの分散配置と施設間の患者ID関連付け機能、そして医療施設の参加障壁を低くするコストパフォーマンスだ。

 ID-LINKでは、処方や画像データなど共有するデータは情報開示する医療施設のシステムがすでに保存しているものを利用するもので、データはそれぞれのシステムに置かれている。それらのデータの実体(各医療施設の実データ)を参照するためのショートカット、つまりエイリアスだけをデータセンターに設置した地域連携サーバに置いているところが肝だ。

例えば、医療連携する患者の診療経過は時系列で表示され、それぞれの処方内容や検査記録を表すアイコンをクリックすると、その指示は地域連携サーバを経由して、情報開示施設の電子カルテシステム(またはオーダリングシステム)のデータを直接呼び出してくる仕組みである。したがって、地域連携サーバ上には共有する診療データは存在せず、分散配置されたデータを共有することになる。

SEC医療システム事業部部長の伊藤龍史氏

SEC医療システム事業部部長の伊藤龍史氏

 「地域医療連携システムの多くは、連携の中心となる中核病院に連携システムが置かれ、共有するすべてのデータがそこに保存されます。連携先施設や患者数の増加に比例してデータ量は増え、システム拡張に伴って徐々にコスト増大を招くことになります。また、各医療施設内にある電子カルテシステムのデータとは別に地域連携システムのためにデータの入力や移行を行わなければならず、これが運用の煩雑さを招くことに繋がっています。ID-LINKでは連携サーバに共有する実データが存在しないため、データ量増加に伴うコスト増大はなく、また連携サーバからの情報漏えいリスクがありません」と、SEC医療システム事業部部長の伊藤龍史氏はデータ分散配置の仕組みのメリットを主張する。また、中核病院と連携施設がスター型に連携するものでなく、各施設が相互に対等に位置付けられて連携する構造なので、中核病院を中心とした病診連携だけでなく、病病連携、診診連携にも対応できるメリットもある。

 施設間の患者ID関連付け機能は、各医療施設の患者IDをそのまま利用し、それらを関連付けるIDを設定できる仕組みだ。地域医療連携に参加する医療施設は、電子カルテはともかく、ほとんどがレセコンは導入済みで、それぞれで患者IDを持っている。各医療機関は、その自施設の患者IDで地域連携システムの患者を操作可能なため、利便性が高い上に、患者IDの煩雑制がなく患者取り違えのミスを防ぐことができる。

 一方、コスト面のメリットは、前述のように連携サーバがデータ非蓄積型であることに加え、一定水準以上のネットワークセキュリティを確保した上で、コストを抑えた通信インフラ設備としたことだ。理想的には、連携する各施設を通信事業者が提供するIP-VPNサービス(internet protocol - virtual private network:伝送プロトコルをIPに制限した仮想閉域網サービス)や各施設にVPN装置を設置した仮想プライベート網を構築することでセキュリティを強固にすることが望まれる。

 しかし、サービス利用費や装置導入コストがかさむと、連携する診療所などの参加障壁となる。そこでMedIkaでは、インターネットを全面的に利用し、情報開示施設とデータセンター間を、VPN装置を用いたIPSec VPNトンネルで接続し、診療情報を参照するだけの施設とデータセンターはSSL-VPNと呼ばれる簡易に利用できるセキュアな通信方式と、アクセスする端末のデジタル証明書による方式でコストを抑えたセキュリティ方式を採用した。こうしたネットワーク構造によってMedIkaでは、情報閲覧のみの施設で月額7000円、情報開示施設は300床以上の施設で月額8万円、300床未満の施設で月額5万円という利用コストを実現している。

●情報共有による患者状態の事前把握、地域連携パスのプラットフォームとして活用

 MedIkaで開示・閲覧できる情報は、転科・退院時サマリー、処方・注射内容、検体検査・細菌検査結果、画像・読影レポート、診療情報提供書、手術記録、看護連絡書など。最近は緩和ケア相談依頼書・報告書なども順次公開されているという。「市立函館病院としてはどんなデータでも公開する用意はあるが、連携先の医療機関にとっては、すべての診察記録を公開しても果たして利用価値はあるのか、目的のところにたどり着けるのかという懸念もあって、現在は重要なサマリーを中心に処方、検査データなどを公開しています」(下山氏)。

 一方、連携先の高橋病院では、「オンライン化される以前のように診療情報提供書という1枚のペーパーでは、患者に徘徊がある、あるいは合併症の危険があるなど負の情報や他科の情報が不確かなケースが多々あります。複数科での処方や検査データ、画像などの情報が事前に把握できれば、転院に際してさまざまな事前準備ができる上、退院時要約などによって、診療情報提供書には記載されない生の情報を入手できることは非常に有効」(高橋氏)と、情報共有のメリットを強調する。

 また、患者の急性期病院における検査データや画像データを共有できるメリットは、事前の患者状態の把握だけでなく、転院後の回復期病院での検査結果を加えて病院間での患者状態の変化の把握が容易にできるという利点を指摘する。もちろん、重複検査の無駄を省くことによって患者の負担減や医療費の削減にも貢献する。システムを提案したSECの伊藤氏は医療費削減の定量的効果として、回復期病院での1年間の試行実績人数(紹介患者36人/月)に基づく試算で、年間約160万円の削減効果があると予測している。

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