事例研究:名古屋大学医学部附属病院

医療者にとって理想的な電子カルテシステムの構築に向けて

 名古屋大学医学部附属病院は、第5次医療情報システムを2007年1月に稼動させた。医療情報システムを道具として捉え、ユーザーフレンドリーであることをフィロソフィーとコンセプトに構築したシステムは、医療現場のスタッフを起点として、使いやすくかつ真の医療の質向上に寄与するインテリジェントなツールを目指している。

診療現場の視点に立ったフィロソフィーとコンセプトを掲げてシステム刷新

 明治4年の名古屋藩評定所跡に仮病院が置かれたときに始まり、診療・教育・研究の中心として、130年以上にわたって中部・東海地方の中核病院として機能してきた名古屋大学医学部附属病院(以下、名大附属病院)。病床数は1000を超え、1日の外来患者数も2000人を上回るという、全国でも屈指の大規模病院である。

医療系管理部副部長・情報管理室長の吉田茂准教授

医療系管理部副部長・情報管理室長の吉田茂准教授

 早くから医療のIT化を推進してきた名大附属病院であるが、5年ごとのシステム更新で第3次までにオーダリングを、第4次でその拡張と電子カルテ化を実施。2007年1月にカットオーバーした第5次システムでは、システムの信頼性・可用性やレスポンス向上などを目指して全面的に刷新して、現場の医師の診療を最大限に支援する医療情報システムを構築した。


 「第4次システムで電子カルテ化を推進しましたが、当初はオーダリングシステムの更新を行う予定が、予算を獲得できたために電子カルテシステムを導入したというのが実態。稼動までに時間も要しましたし、当初は医療現場から不満も多く出たと聞いています。特にシステムダウンもあるなど信頼性・可用性をはじめ、レスポンスにも問題がありました。また、独自に開発・導入されてきていた部門システムとの連携も十分とは言えず、医療現場の支援という視点が満たされていないのが実状でした。そこで、3年にわたってシステム委員会で利用者のニーズを汲み上げる作業を続け、現場視点のシステムづくりに注力しました」。医療系管理部副部長・情報管理室長の吉田茂准教授は、リプレースの経緯をこう述べる。


 第5次システムでは、過去のそうした課題を踏まえて、医療情報システムをあくまでも道具という認識に立って、診療現場のユーザーに役立つシステムづくりをフィロソフィーとした。それをベースにユーザーフレンドリーなインタフェースであることコンセプトに掲げた。これらを実現する要素として、安定稼動を目指すハードウェア/ネットワークインフラの充実、円滑な診療業務を可能にするレスポンスの向上、ファイルメーカーProを活用して医療の質に貢献する真の意味での電子カルテ、電子クリニカルパスの搭載といったことに取り組んだ。


性能向上に貢献した高性能基幹サーバーとオブジェクト型データベースの採用


 システムの安定稼動とレスポンスの向上を実現するためにとった施策としては、最新のデュアルコア インテル Itanium 2プロセッサーを最大32CPU(64コア)まで搭載可能な富士通の基幹サーバー「PRIMEQUEST 580」を医療業界で初めて導入し、性能向上と信頼性・可用性を実現したことと、医療情報システムの核となるデータベースをリレーショナル・データベースからオブジェクト型データベースの「Caché(キャシエ)」を採用したことがポイントになっている。


 インターシステムズ社のCachéは、米国の医療業界では高い評価を受けており、国内の大規模病院でも導入実績を積み上げつつあるが、その知名度はまだそれほど高くはない。


 「米国では評価されつつも日本でメジャーになれないのは、価格が高いということと技術者がいないのでサポートが十分でなく、効果的に扱うことができないというネガティブな声があることです。その2つのネガティブな見方を覆せればいいのではないかと考え、電子カルテベンダーの富士通とインターシステムズの2社に直接交渉の上で導入の障害にならないと判断して決定しました」(吉田氏)と採用の経緯を語る。


 電子カルテシステムのデータベースは、電子カルテベンダーが扱いやすく、技術者も豊富な一般的なリレーショナル・データベースがベンダー側の都合で導入されることがほんとどだ。吉田氏は、このようなプラットフォーム選定に限らず、実際に医療現場に携わるユーザーが製品や技術を自ら評価し、ユーザー本位でシステム開発にあたるべきという信念を持っており、その結果がCaché採用に至った背景となっている。





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