連載・コラム
連載: 苦いカルテ・幸せのカルテ
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【連載第17回・日経メディカル Cadetto連動企画】
患者家族としての終末期医療の悔い
洛和会音羽病院(京都市山科区)院長 松村 理司氏
2007/ 6/21
医師になって30数年、振り返ると「苦いカルテ」の方がずっと多い。ただ今回は、私の父親のことを取り上げてみたい。医師と患者との関係ではなく、患者の身内としての経験を通じて感じたことをお伝えしようと思う。
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【連載第16回・日経メディカル Cadetto連動企画】
対応が遅れ植物状態に、その患者から得た教訓
札幌医大地域医療総合医学教授 山本 和利氏
2007/ 6/18
地域医療を中心に約30年臨床に携わってきたが、これまでに「一番過酷だった」という印象がある患者さんを紹介しよう。今から10年以上前、私が設立間もない京大総合診療部の講師を務めていたときのことだ。ある日、1年以上も複数の医療機関を転々としていた20歳代の男性が不明熱で外来を訪れた。経…
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【連載第15回・日経メディカル Cadetto連動企画】
「私は何の病気ですか」、癌告知に目覚めた一言
ケアタウン小平クリニック(東京都小平市)院長 山崎 章郎氏
2007/ 6/14
「先生、私の病気は本当は何なのですか」。ある日の夕方、私が回診に行ったとき、末期の胃癌で入院していた男性がこう尋ねた。私はうろたえてしまい、すぐに別の話題に切り替え、結局は答えることができなかった。患者さんは、「ありがとう」と言って眼を閉じ、もう二度と同じ質問を繰り返すことは…
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【連載第14回・日経メディカル Cadetto連動企画】
“結核”が頭に浮かばず対応が後手に
東京女子医大腎臓病総合医療センター外科教授 寺岡 慧氏
2007/ 6/11
今でも、毎日のように思い出す患者さんがいる。忘れることはできない。その患者さんと出会い、その方が亡くなったのは、私が茨城県立中央病院に外科医として勤務していた1976年、大学を卒業して7年目のことである。
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【連載第13回・日経メディカル Cadetto連動企画】
総合診療医の原点となった患者家族の一言
筑波大病院総合臨床教育センター病院教授 前野 哲博氏
2007/ 6/ 7
「主人は、本当にそれだけのことをしてくれましたので」。私が研修医1年目として河北総合病院(東京都杉並区)に勤務していたとき、在宅で診ていた患者さんの奥様にある日、「なぜそんなに一生懸命に介護をされているのですか」と尋ねたところ、返ってきた言葉だ。その言葉に私は心から感動したこと…
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【連載第12回・日経メディカル Cadetto連動企画】
「患者の物語」を支える それが医師の役割だと痛感
国立病院機構東京医療センター臨床疫学研究室長 尾藤 誠司氏
2007/ 6/ 4
内科医として患者さんと接していく中で、一番いろいろ考え、気付かされるのは、慢性疾患と終末期医療の患者さんだろう。前者の中で、特に印象に残っているのは2人の糖尿病の患者さんだ。
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【連載第11回・日経メディカル Cadetto連動企画】
5000例の心臓手術、その原点
心臓血管研究所(東京都港区)スーパーバイザー 須磨 久善氏
2007/ 6/ 1
本当に胸が高鳴り、うれしく、かつ最も緊張した手術――。それは私が初めて術者としてメスを握った手術だ。これまで心臓バイパス手術は3000例以上、心臓外科手術全体では5000例以上を手がけてきた。日本で初めてバチスタ手術を手がけるなど様々な経験をしてきたが、その中でも一番印象に残っている…
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【連載第10回】
「生きる」とは何かをじっくり考える
済生会栗橋病院(埼玉県栗橋町)副院長 本田 宏氏
2007/ 4/13
先日、私はネット上のあるインタビュー番組で、「なぜ医師になろうと思ったのですか」と聞かれた。ひょんなことから医学部に入学した私、ほとんど打合せもない本番での予期せぬ質問で、とっさに「実は、私は人に自慢できるような目的があって医学部を選んだのではないのです。ただ今では、医師にな…
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【連載第9回】
頸動脈エコーで持論の正しさを実感
ニコークリニック(佐賀県武雄市)理事長 田中 裕幸氏
2007/ 4/12
1990年代後半に私は出身地で開業した。その後、1997年に日本動脈硬化学会のガイドラインが発行されたが、女性の高コレステロール血症に対する考え方に疑問を持った。
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【連載第8回】
教授と病棟医長の板ばさみ――経験か理論か
ニコークリニック(佐賀県武雄市)理事長 田中 裕幸氏
2007/ 4/11
私が医師になって、既に29年の月日が過ぎた。苦い思い出ばかりが脳裏に浮かぶのは、医師が常に満点を目指して頑張っている証拠であるといえば聞こえは良いが、実際は、医療訴訟を経験しなくてよかった、とほっとしているというのが正直なところだろう。
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【連載第7回】
「話したい」、呼吸不全患者の切なる訴え
牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)院長 牧瀬 洋一氏
2007/ 4/10
私が呼吸器疾患の診療を学び始めたのは、在宅酸素療法が保険適用されたころである。入局した医局の関係で循環器疾患も比較的多く担当したが、呼吸器疾患の患者さんは抑うつ的になりやすいと学んだ。呼吸機能や動脈血などの状況だけでなく、生活・経済・社会的背景もこの疾患には負の心理的影響を与…
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【連載第6回】
患者の電話に辟易、クモ膜下出血を見逃す
牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)院長 牧瀬 洋一氏
2007/ 4/ 9
ある大きな病院に勤務していたとき、慢性閉塞性肺疾患で在宅酸素療法を導入し、外来でフォローしていたが、どうしても通院困難となり、私自身が訪問診療を行っていた患者さんがいる。この患者さんはかなりの高炭酸ガス血症だったが、在宅酸素療法がまだあまり普及していない時代であり、病診連携で…
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【連載第5回】
吸入ステロイド薬の使い方を患者から学ぶ
宮川医院(岐阜市)院長 宮川 武彦氏
2007/ 4/ 6
喘息を中心に開業して29年、当初から吸入ステロイド薬を使用していました。当時、わが国では吸入ステロイド薬はほとんど使われておらず、参考になる書籍や文献もなく、苦労と試行錯誤の状態が続いていました。そんな中で吸入ステロイド薬の使い方を多くの患者から学び、それにより多く喘息患者で成…
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【連載第4回】
軽率な発言が医療訴訟を招く
飛岡内科医院(岡山市)副院長 飛岡 宏氏
2007/ 4/ 5
医療現場において、一番嫌なことは医療訴訟である。ここに紹介するのは、私の患者さんの事例だが、紹介先の病院スタッフの言動に起因するエピソードでもある。
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【連載第3回】
患者家族の希望をかなえた終末期医療
飛岡内科医院(岡山市)副院長 飛岡 宏氏
2007/ 4/ 4
1995年夏。父の代より、高血圧症で診ていた87歳男性。それまでは、生き生きとしていたのだが、ある日突然、「最近、老いを感じる。歳を取ると何も良いことがない」と訴え出した。一般的な検査に異常所見なし。うつ状態とは見えない。