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ガイドライン外来診療2009

うつ病

  • 広島大学病院 精神科 講師 岡本 泰昌

診断

  • 代表的な症状として、(1)ほとんど毎日の抑うつ気分、(2)興味、喜びの著しい減退、(3)著しい体重減少、あるいは体重増加、(4)睡眠障害、(5)精神運動性の焦燥または制止、(6)易疲労性、気力の減退、(7)無価値感、不適切な罪責感、(8)思考力や集中力の減退、(9)自殺念慮、自殺企図、が挙げられる。
  • 上記のうち5つ以上が2週間以上存在し、そのうち少なくとも1つは(1)または(2)である。
  • これらの症状により著しい苦痛、社会機能の損失が引き起こされている。
  • これらの症状は身体疾患や薬物によるものではなく、また、愛する者を失ったことに起因する反応ではない。
  • 以上を満たすとき、うつ病と診断される。

治療

  • 治療は、うつ症状の改善だけでなく機能的回復を目標とする。
  • 抗うつ薬の単剤療法を基本とし、症例に応じてベンゾジアゼピン系薬物を併用する。
  • 第1選択薬は、SSRI(パロキセチン塩酸塩水和物〈パキシル®〉、フルボキサミンマレイン酸塩〈ルボックス®、デプロメール®〉、塩酸セルトラリン〈ジェイゾロフト®〉)、もしくはSNRI(ミルナシプラン塩酸塩〈トレドミン®〉)である。
  • 初期投与量から開始し、効果が得られるまで、維持量まで十分に増量し、十分な期間用いる。
  • 薬物療法の失敗は「多すぎる初期用量と少なすぎる維持用量」「短すぎる投与期間」による。
  • 休養を十分にできる環境がもたらされるように配慮する。
  • 自覚的おっくう感だけになった段階で、生活リズムを整え、軽作業や軽い運動を始める。
  • すべてのうつ病で、再燃・再発防止のため、寛解後6カ月の継続療法を行う。
  • うつ病を繰り返す例では、年単位の維持療法を行う。

処方例

    治療開始時

    (1)(以下のいずれかを選択)

  • パキシル錠(10mg) 1錠 分1 夕食後
  • ルボックス錠 または デプロメール錠(25mg) 2錠 分2 朝 夕 食後
  • トレドミン錠(25mg) 1〜2錠 分2 朝 夕 食後
  • ジェイゾロフト錠(25mg) 1錠 分1 夕食後
  • 上記に加え、必要に応じて以下の(2)〜(4)を処方

    (2)不安、焦燥が強い場合(いずれかを選択)

  • ワイパックス錠(0.5mg) 3錠 分3 食後
  • ソラナックス錠(0.4mg) 3錠 分3 食後
  • (3)不眠が存在する場合(いずれかを選択)

  • マイスリー錠(5/10mg) 1錠 分1 就寝前
  • レンドルミン錠(0.25mg) 1錠 分1 就寝前
  • (4)胃腸障害の副作用が出現、もしくは予想される場合

  • ガスモチン錠(5mg) 3錠 分3 食後
  • 上記投与量では十分な改善を認めない場合

    (1)の抗うつ薬を下記の投与量を最大として、効果があるまで漸増

    (以下のいずれかを選択)

  • パキシル錠(20mg) 2錠 分1 夕食後
  • ルボックス錠 または デプロメール錠(50mg) 3錠 分2 朝 夕 食後
  • トレドミン錠(25mg) 4錠 分2 朝 夕 食後
  • 投与開始後、2〜4週間継続して薬剤の効果が不十分であるときには、2〜4週間、できれば6週間かけて徐々に最大量まで増量。
  • 継続・維持療法

  • 再燃・再発防止のため、急性期に用いた抗うつ薬と同量を6カ月以上投与する。減量の際には、離脱症状に注意しつつ、2〜4週間ごとに総量の1/4ずつ減量する。
  • 高齢者に対する投薬上の注意

    高齢患者に対しては、SSRI、SNRIともに最小投与量から開始し、増量もよりゆっくりと行う。抗不安薬、睡眠導入薬により、眠気、転倒、せん妄などが出現しやすいので、十分に注意する。

患者・家族への説明のポイント

  1. うつ病は怠けではなく、治療の対象となる病気である。
  2. 治療により治ることが期待できる病気である。
  3. 治療初期は十分な心理的な休養と薬物療法が大事である。
  4. 回復期には頭と身体のリハビリが必要である。
  5. リハビリでは小さな達成感を積み重ねるようにする。

どのような場合に専門医に紹介すべきか

  • 診断に迷う場合
  • 自殺の危険性が高い場合
  • 若年者の場合
  • 躁症状の既往がある場合
  • 脳の器質的障害が疑われる場合
  • アルコール依存症が疑われる場合
  • うつ症状が重症の場合
  • パニック障害が疑われる場合
  • 入院が必要だと考えられる場合
  • 最初に使った抗うつ薬の効果がない場合
  • 焦燥感が強い場合
  • 環境調整が困難な場合
  • 精神病像がある場合
  • うつ症状が慢性化している場合

参考文献

  • Kupfer DJ : Long-term treatment of depression. J Clin Psychiatry 52(Suppl.): 28, 1991.
  • 塩江邦彦 他:大うつ病性障害の治療アルゴリズム.気分障害の薬物治療アルゴリズム(精神科薬物療法研究会 編).p19,じほう,東京,2003.
  • 高橋三郎 他 訳:DSM--TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 新訂版.医学書院,東京,2004.
  • 大森哲郎:うつ病性障害,治療法の解説.気分障害治療ガイドライン(上島国利 編).p46,医学書院,東京,2004.
  • 樋口輝彦 企画:うつ病のすべて.医学のあゆみ 219(13),2006.
  • 岡本泰昌:気分障害治療薬の薬効と特徴,副作用,抗うつ薬.気分障害(上島国利 他 編).p116,医学書院,東京,2008.
ガイドライン外来診療2010
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◎このコーナーでは、毎年発行されている書籍『ガイドライン外来診療』の2009年度版から、代表的な46疾患の診断、治療、処方例などを簡潔に解説した「要約」を転載しています。
◎書籍の最新版『ガイドライン外来診療2010』では、診断・治療のポイントとともに代表処方例を200以上掲載するほか、専門医の管理・治療が必要な26疾患の解説も掲載しています。また図表200点以上を収載、臨床現場で使いやすい2色刷になっています。

編集主幹:泉 孝英(京都大学名誉教授/京都・中央診療所)

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